「暗いところでテレビを見ていると目が悪くなるわよ!」
子供の頃、親からそう注意された経験はありませんか?まるで常識のように語り継がれてきたこの言葉ですが、大人になってからふと疑問に思う方も多いでしょう。
「映画館はあんなに真っ暗なのに、なぜ視力が下がると言われないの?」
「本当に科学的な根拠はあるの?」
実は、「暗いところでテレビを見ると目が悪くなる(視力が低下する)」という説に、直接的な医学的根拠はありません。
この記事では、なぜ「嘘」だと言い切れるのか、その理由を眼科医の見解などの専門的な視点から解説します。さらに、映画館との決定的な違いや、今日からできる「目に優しい視聴環境(間接照明の活用など)」まで徹底的に掘り下げていきます。
この記事を読めば、長年のモヤモヤが解消され、安心してテレビや映画を楽しめるようになりますよ。
※2025年12月18日 記事の内容を最新の情報に更新しました。
「暗いところでテレビを見ると目が悪くなる」は嘘!
まずは結論からお伝えします。
「暗い部屋でテレビを見ると、視力(近視や乱視)が悪化する」という説には、医学的・科学的に明確な根拠がありません。
多くの眼科医や専門家も、部屋の明るさが直接的に近視の進行原因になるというデータはないとしています。
医学的根拠がないと言われる理由
視力が低下(近視が進行)する主な原因は、遺伝的要因や、長時間の「近業(きんぎょう:近くを見続ける作業)」による眼軸長の伸長などが挙げられます。
単に「部屋が暗い」という環境要因だけで、眼球の形状が変化し、恒久的に目が悪くなるということは考えにくいのです。

視力低下は嘘でも…暗い部屋での視聴が招く3つの悪影響
「目が悪くならないなら、これからは暗い部屋で見ても大丈夫!」と安心するのは早計です。
視力低下に直結しなくても、暗い場所でのテレビ視聴が目に大きな負担をかけ、不調を引き起こすことは事実だからです。
具体的にどのようなデメリットがあるのか、3つのポイントで解説します。
1. 激しい眼精疲労(自律神経の乱れ)
私たちの目は、暗い場所では光を多く取り込もうとして「瞳孔」を開き、明るい場所では閉じようとします。
暗い部屋で明るいテレビ画面を見ると、目は「暗いから瞳孔を開きたい」のと「画面が眩しいから瞳孔を閉じたい」という矛盾した状態に陥ります。
その結果、ピントを調節する筋肉(毛様体筋)がパニックを起こして激しく疲労します。これが眼精疲労の正体です。
- 目の奥が痛む
- 頭痛や肩こりがひどくなる
- 自律神経が乱れて吐き気がする
このような症状が出ると、日常生活にも支障をきたしてしまいます。
2. ドライアイと角膜へのダメージ
暗闇の中で発光体(テレビ画面)を見つめると、人は無意識に集中し、まばたきの回数が極端に減ります。
通常は1分間に20回ほどするまばたきが、5回程度まで減ることもあります。その結果、目の表面が乾燥し、角膜を傷つける「ドライアイ」のリスクが高まります。
3. ブルーライトによる睡眠障害
暗い部屋では瞳孔が開いているため、テレビから発せられる「ブルーライト」が網膜の奥までダイレクトに届きやすくなります。
夜間に強い光を浴びると、脳が「今は昼間だ」と勘違いし、睡眠ホルモンである「メラトニン」の分泌を抑制してしまいます。その結果、「寝つきが悪い」「朝起きられない」といった睡眠障害を引き起こす恐れがあります。
なぜ映画館は真っ暗でも「目が悪くなる」と言われないの?
ここで多くの方が抱く疑問にお答えしましょう。
「暗いところで見るのが目に悪いなら、なぜ映画館は大丈夫なの?」
「映画館に行くと目が悪くなるなんて聞いたことないけど?」
実は、映画館と自宅のテレビでは、光の性質と視聴環境がまったく異なります。映画館がOKな理由は主に2つあります。
理由1:直接光ではなく「反射光」だから
自宅のテレビは、画面そのものが発光して目に光が飛び込んでくる「直接光」です。光のエネルギーが強く、目への刺激も強くなります。
対して映画館のスクリーンは、プロジェクターの光をスクリーンに当てて、跳ね返った光を見ている「反射光」です。反射光は直接光に比べて柔らかく、目への負担が大幅に軽減されます。
理由2:視聴距離が遠いから
映画館はスクリーンまでの距離が数メートルから数十メートルあります。遠くを見ている状態に近いため、目のピント調節筋(毛様体筋)があまり緊張しません。
一方、自宅のテレビは至近距離で見ることが多く、さらに部屋が暗いと視界の明暗差(コントラスト)が激しくなり、目の負担が倍増してしまうのです。
子供が暗い部屋で見るときの特別な注意点
大人以上に気をつけたいのが、成長期にある子供の目です。
子供はピント調節能力が非常に高く、大人よりも無理がきいてしまいます。そのため、本人が「目が疲れた」と感じていなくても、知らず知らずのうちに限界を超えた負担がかかっているケースがあります。
「仮性近視」に注意
暗い部屋でテレビやゲームに熱中し、目の筋肉が緊張状態で固まってしまうと、一時的に視力が低下した状態になります。
これは「仮性近視(調節緊張)」と呼ばれます。この状態を放置して悪い習慣を続けると、眼軸が伸びてしまい、本当に近視(軸性近視)へと移行してしまうリスクがあります。
「視力が低下しない」というのはあくまで医学的な定義の話であり、子供の生活習慣としては、暗い部屋での視聴は絶対に避けるべきです。
目に優しいテレビの視聴環境を作る5つの方法
では、どうすれば目に負担をかけずに、快適にテレビを楽しめるのでしょうか。
「部屋を明るくする」以外にも、今日からすぐに実践できる具体的なテクニックを5つご紹介します。
1. 部屋の照明をつけて「明暗差」をなくす
基本中の基本ですが、部屋の照明(シーリングライトなど)をつけましょう。
重要なのは、テレビ画面の明るさと、周囲の明るさの差(コントラスト)を減らすことです。部屋全体を明るくすることで、瞳孔の過度な負担を防げます。
2. テレビの裏に「間接照明」を置く
「映画のような雰囲気を出したいから、部屋をあまり明るくしたくない」
そんな方におすすめなのが、テレビの背面や周辺に間接照明を置くこと(バイアスライティング)です。
テレビの後ろの壁をぼんやりと照らすことで、画面と背景の輝度差が和らぎ、目の負担が劇的に軽減されます。おしゃれなインテリアにもなり、一石二鳥のテクニックです。
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3. 画面の「輝度」を下げる・画質設定を見直す
部屋の照明を少し落とすなら、それに合わせてテレビ画面の明るさ(バックライトの輝度)も下げてください。
最近のテレビは、店頭で見栄えが良いように初期設定がかなり明るくなっています。設定メニューから「明るさ」を下げるか、映像モードを「シネマ」や「映画」に変更するだけで、光の刺激が抑えられて目に優しくなります。
4. 適切な視聴距離をキープする
テレビに近づきすぎると、目の筋肉に力が入ります。適切な距離を保ちましょう。
- フルハイビジョンテレビ(2K):画面の高さの約3倍
- 4Kテレビ:画面の高さの約1.5倍
4Kテレビは画素が細かいため、近くで見ても粗が目立たず、視野角を広げて没入感を得るために近めの距離が推奨されていますが、目が疲れる場合は少し離れて見るようにしましょう。
5. 1時間に1回は「遠く」を見る
どんなに環境を整えても、長時間同じ距離を見続ければ目は疲れます。
「CMに入ったら窓の外を見る」「トイレ休憩のついでに部屋の対角線を見る」など、意識的に2メートル以上先を眺めてください。近くにピントが固定されていた筋肉がストレッチされ、疲労の蓄積を防げます。
目が疲れにくい最新テレビの機能とは?
もしテレビの買い替えを検討しているなら、「目に優しい機能」が搭載されているかどうかも重要なチェックポイントです。
最新のテレビには、私たちの目の健康を守るための技術が数多く採用されています。
- 明るさセンサー(照度センサー):部屋の明るさに合わせて、画面の輝度を自動で最適化してくれる機能。
- フリッカーフリー技術:目に見えない画面の「ちらつき」を抑制し、脳への負担を減らす技術。
- ブルーライト低減モード:目に有害な波長の光をカットしたり、色温度を調整したりする機能。
- 有機EL(OLED):液晶テレビのようにバックライトを使わないため、ブルーライトの放出量が比較的少ないと言われています。
テレビは毎日見るものだからこそ、目への負担が少ないモデルを選ぶことは、ご自身やご家族の健康への投資になります。
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よくある質問(Q&A)
最後に、暗い場所でのテレビ視聴に関してよくある疑問にお答えします。
真っ暗よりはマシですが、テレビ画面との明暗差が大きいため十分とは言えません。手元の文字が読める程度の明るさを確保するか、テレビ裏の間接照明を活用することをおすすめします。
はい、テレビ以上に目に悪いです。スマホは距離が近いうえに画面が小さく、強いブルーライトを発しています。暗い部屋でのスマホ操作は「スマホ老眼」や睡眠障害の大きな原因になります。
一定の効果は期待できます。特に夜間、どうしてもテレビやスマホを見たい場合は、ブルーライトカット眼鏡を使用することで、睡眠への影響や目の疲れを軽減できる可能性があります。
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まとめ:正しい知識で目を守り、テレビを楽しもう!
「暗いところでテレビを見ると目が悪くなる」という説は、医学的な根拠こそありませんが、目を酷使する行為であることに変わりはありません。
最後に、この記事の重要ポイントを振り返りましょう。
- 視力低下の直接原因ではないが、強烈な眼精疲労の原因になる。
- 自律神経の乱れや睡眠不足につながるリスクがある。
- 映画館とは「光の性質(反射光)」が違うので、自宅での真っ暗視聴はNG。
- 間接照明や画面設定で「明暗差」を減らすことが対策の鍵。
テレビは私たちの生活を豊かにしてくれる素晴らしいエンターテイメントです。
ほんの少し部屋の明かりを調整したり、見る距離を意識したりするだけで、目の疲れは大きく変わります。正しい知識を持って、これからも健康的にテレビライフを楽しんでくださいね。


