「会社のパソコンを新しくするなら、月々の支払いを抑えられるリースが良いかな?」「契約期間を長くすれば、もっと安くなるみたいだけど、パソコンのリース期間を5年にするのって本当にお得なんだろうか…?」
企業のIT担当者様や経営者様の中には、このようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
近年、初期費用を抑えつつ最新のIT環境を整備できるパソコンリースは、多くの法人にとって魅力的な選択肢となっています。特に、月額費用を極限まで抑えられる「5年リース」は、コスト削減を重視する企業にとって非常に気になる存在ですよね。
しかし、長期契約である5年リースには、コストメリットの裏に隠れたデメリットやリスクも存在します。安易に契約してしまうと、「性能が物足りなくて仕事にならない」「故障が頻発して、かえって高くついた」といった事態に陥りかねません。
この記事では、パソコンのリース期間を5年に設定するメリット・デメリットを徹底的に掘り下げ、3年リースや購入、レンタルといった他の調達方法とも比較しながら、貴社にとって最適な選択肢は何かを明らかにします。コストとリスクの両面から深く理解し、後悔のないパソコン導入を実現するための判断材料として、ぜひ最後までご覧ください。
パソコンのリース期間、5年を選ぶ3つのメリット
まず、なぜ多くの企業が5年リースを検討するのでしょうか。その魅力は、主にコスト面と運用面にあります。ここでは、パソコンのリース期間を5年に設定する具体的なメリットを3つ解説します。
メリット1:月額コストを最小化できる
5年リース最大のメリットは、月々の支払い負担を極力抑えられる点です。
リース料金は、パソコン本体の価格を契約月数で割って算出されるため、契約期間が長くなるほど1ヶ月あたりの支払い額は安くなります。
例えば、同じスペックのパソコンでも、3年リースと5年リースを比較すると、月額で数千円の差が出ることが一般的です。仮に1台あたり月額2,000円の差が出るとすれば、50台導入した場合は月々10万円、年間で120万円ものコスト差になります。
この月々のランニングコストを最小化できる点は、特に予算に制約のある中小企業や、一度に大量のパソコン導入が必要な企業にとって、非常に大きな魅力と言えるでしょう。

メリット2:予算が組みやすく資金計画が安定する
リース契約は、毎月の支払額が一定であるため、長期的な資金計画が立てやすいというメリットもあります。
5年リースの場合、5年間という長期間にわたってパソコン関連の費用が固定されます。購入のように導入時にまとまったキャッシュが出ていくことがないため、キャッシュフローを安定させることができます。これは、特に創業期や事業拡大期にある企業にとって、手元資金を確保しながら事業運営できる大きな利点です。
また、経理処理の観点からもメリットがあります。月々のリース料は経費として計上できるため、予算編成がシンプルになります。年度ごとにパソコンの買い替え費用を別途見積もる必要がなくなり、5年間のITコストを平準化して見通せるため、管理部門の負担も軽減されるでしょう。
メリット3:デバイス寿命やOSサポート周期と合う
意外かもしれませんが、5年という契約期間は、パソコンの物理的な寿命やソフトウェアのサポートサイクルとの相性が良い側面もあります。
一般的に、パソコンの物理的な寿命は5年〜7年程度と言われています。特に、SSDや電源ユニットといった重要な内部パーツは、5年を過ぎたあたりから劣化が進み、故障率が上昇する傾向にあります。5年リースであれば、ちょうど部品の寿命が尽きるタイミングで新しい機種に入れ替えられるため、ハードウェアの老朽化による突発的な業務停止リスクを低減できます。
さらに、OSのサポート期間とも合致しやすいです。WindowsやmacOSは数年おきにメジャーアップデートが行われ、古いOSはサポートが終了します。5年程度のサイクルでパソコンを入れ替えることで、常にOSのサポート対象内の新しい環境を維持しやすくなり、セキュリティ面でも安心です。
【要注意】法人のパソコンリースのデメリット5選
月額コストの安さなど魅力的なメリットがある5年リースですが、長期契約ならではのデメリットや注意点も存在します。ここでは、契約前に必ず知っておくべき「法人のパソコンリースのデメリット」を5つの観点から詳しく解説します。
デメリット1:性能の陳腐化で生産性が低下する
IT業界の技術進歩は非常に速く、導入時に最新だったパソコンも、5年後には性能的に見劣りしてしまう「陳腐化」は避けられません。
5年も経つと、CPUの処理速度やメモリ容量、ストレージの読み書き速度などは格段に向上しています。業務で使うソフトウェアやOSも、新しいハードウェアを前提に開発されるため、5年前のパソコンでは動作が重くなったり、最新機能が使えなかったりする場面が増えてきます。
社員が毎日使うパソコンの動作が遅いと、待ち時間が発生し、塵も積もれば山となって大きな生産性の低下につながります。これは社員のストレスにもなり、結果として見えないコストを生むことになるのです。特に、デザインや開発など高いスペックを要求される業務では、この影響はより顕著になります。

デメリット2:故障率の増加と保守費用の増大
長期間パソコンを使い続けることで、経年劣化による故障リスクは確実に高まります。
ある試算では、パソコンのコストとリスクの転換点は「3年」と言われており、3年を超えると保守対応や業務停止による損失が増え始めるとされています。5年リースの契約後半、特に4〜5年目になると、ハードディスクやバッテリー、冷却ファンなどの故障が急増する傾向にあります。
重要なのは、リース契約では通常、自然故障時の修理費用や保守対応はユーザー(借主)負担となる点です。メーカー保証も1年程度で切れていることが多く、保証期間外の修理は高額になりがちです。故障が頻発すれば、その都度修理費用がかさみ、結果的に月額リース料の安さを帳消しにしてしまう可能性もあります。
デメリット3:原則、途中解約ができない
リース契約の大きな特徴として、契約期間中の途中解約が原則として認められていない点が挙げられます。
5年という長い期間の間には、事業方針の転換、人員の増減、オフィスの移転など、様々な変化が起こり得ます。そうした変化によってリースしているパソコンが不要になったとしても、契約を解除することはできません。
やむを得ず解約する場合は、残りの期間分のリース料に相当する金額(規定損害金)を一括で支払う必要があります。これは、実際には使っていないパソコンのために、多額の費用を支払い続けることを意味します。昨今の変化の速いビジネス環境において、5年先まで利用台数が確定していると言い切れるでしょうか?この「中途解約不可」という縛りは、5年リースにおける最大のリスクの一つです。
デメリット4:総支払額は割高になる傾向
「月額料金が安い」というメリットの裏返しになりますが、支払う総額で見た場合、5年リースは3年リースや購入よりも割高になるケースがほとんどです。
リース料金には、パソコン本体の価格に加えて、リース会社の利益や固定資産税、保険料などが上乗せされています。支払い期間が長くなるほど、これらの金利負担分も大きくなるため、トータルの支払額は膨らんでいきます。
以下は、3年リースと5年リースのコストを比較した一般的なイメージです。
契約期間 | 月額料金 | 総支払額 | リプレイス周期 |
---|---|---|---|
3年リース | 5年に比べて高い | 5年に比べて安い | 常に比較的新しい機種を使える |
5年リース | 3年に比べて安い | 3年に比べて高い | 後半2年は旧型PCを使い続ける |
月々のキャッシュフローを重視するのか、それとも長期的なトータルコストを重視するのか、企業の財務戦略によって判断が分かれるポイントです。
デメリット5:資産計上が必要で経理が煩雑に
会計処理の面でも注意が必要です。現在の会計基準では、多くのリース契約(ファイナンス・リース)は「実質的に購入したのと同じ」と見なされ、リースしたパソコンを自社の資産として計上(オンバランス処理)する必要があります。
これにより、減価償却の計算や固定資産台帳での管理といった経理上の手間が発生します。情シスの担当者だけでなく、経理部門の管理コストも増大する点は、法人としてのデメリットと言えるでしょう。
※一部、オフバランス処理が可能なオペレーティング・リースもありますが、パソコンのリースではファイナンス・リースが一般的です。
パソコンは購入とリースどちらが得?徹底比較
「結局のところ、リースと一括購入ではどちらが良いの?」という疑問は、多くの方が抱くことでしょう。この問いに答えるため、「コスト」「手間」「会計処理」の3つの観点から、パソコンは購入とリースどちらが得なのかを徹底比較します。
比較項目 | 購入 | リース | こんな企業におすすめ |
---|---|---|---|
初期費用 | 高額(一括払い) | 不要 | 初期投資を抑えたい企業 |
総支払額 | 最も安い | 購入より割高 | トータルコストを重視する企業 |
保守・修理 | 自己責任・自己負担 | 自己責任・自己負担 | – |
廃棄・処分 | 自己責任(費用・手間) | 返却するだけ | 処分まで任せたい企業 |
所有権 | 自社 | リース会社 | 資産として保有したい企業 |
会計処理 | 資産計上(減価償却) | 原則、資産計上 | – |
柔軟性 | 高い(自由に変更・売却可) | 低い(中途解約不可) | 人員の増減が少ない企業 |
コスト(初期費用・総額)で比較
初期費用を抑えたいなら「リース」、総支払額を抑えたいなら「購入」に軍配が上がります。
購入は導入時に多額の費用が必要ですが、支払いはそれ一度きりです。一方、リースは月々の支払いは楽ですが、金利や手数料が上乗せされるため、総額では購入よりも高くなります。資金に余裕があり、長期的に同じPCを使い続けることが確定しているなら、購入の方が経済的合理性は高いと言えます。
手間(管理・保守・処分)で比較
管理の手間を考えると、処分の手間がない分「リース」が有利です。
購入した場合、PCは会社の資産となるため、固定資産としての管理が必要です。また、不要になった際の廃棄処分も自社の責任で行わなければなりません。PCは産業廃棄物にあたるため、法に則った適切な手続きが必要で、データ消去の手間や費用もかかります。
一方、リースであれば契約満了後にリース会社へ返却するだけです。廃棄処分の手間とコストがかからない点は、大きなメリットと言えるでしょう。(ただし、返却前のデータ消去は自社の責任です)
会計処理の違い
前述の通り、現在の会計ルールでは、リースも購入も原則として「資産計上」が必要です。そのため、この点では大きな差はありません。ただし、中小企業向けの会計基準や、短期・少額のリース契約では例外的に賃貸借処理(オフバランス)が認められる場合もあります。自社の状況に合わせて経理・税理士に確認することをおすすめします。
パソコンのリース料率、4年と5年の違いは?
「5年は長すぎるけど、3年だと月額が高い…間の4年はどうなの?」という疑問も出てきますよね。パソコンのリース料率は、契約年数によってどう変わるのでしょうか。
結論から言うと、リース料率そのものが年数で大きく変わるわけではなく、総額を何ヶ月で割るかによって月額料金が決まります。
リース料率とは、物件価格に対する月額リース料の割合のことで、一般的に「料率 = 月額リース料 ÷ 物件取得価格」で計算されます。この料率は、契約年数に応じて設定されています。
- 3年(36回払い):料率 約3.0%前後
- 4年(48回払い):料率 約2.3%前後
- 5年(60回払い):料率 約1.9%前後
※上記はあくまで目安です。
見ての通り、契約年数が1年延びるごとに、月額料金は安くなります。4年リースは、3年と5年のちょうど中間に位置する選択肢です。5年リースの「性能陳腐化」や「故障リスク」が気になるものの、3年リースの月額コストは負担が大きいと感じる場合に、4年リースはバランスの取れた選択肢となる可能性があります。
レンタルと購入の分岐点はどこにある?
リースと購入の比較と合わせて、「レンタル」という選択肢も気になりますよね。特に、レンタルと購入のどちらを選ぶべきか、その分岐点について解説します。
レンタルと購入の分岐点は、利用期間と柔軟性のニーズによって決まります。
結論を先に言うと、以下のようになります。
- 1年未満の短期利用や、利用台数の増減が激しい場合 → レンタル
- 3年以上、同じPCを使い続けることが確定している場合 → 購入
レンタル最大のメリットは「契約の柔軟性」です。数ヶ月単位での契約が可能で、中途解約にも対応しています(※解約金が必要な場合あり)。「短期プロジェクトで一時的にPCが必要」「新入社員の入社時期に合わせて柔軟に台数を調整したい」といったニーズには最適です。
一方、購入は長期間使えば使うほど、1日あたりのコストは下がっていきます。3年、4年と使い続けるのであれば、レンタルよりも購入の方がトータルコストは安く済みます。
つまり、「いつまで、何台必要か」が不確定なうちはレンタルを利用し、長期的な利用計画が固まった段階で購入を検討するというのが、賢い分岐点と言えるでしょう。
パソコンのリース期間の最長と法定耐用年数
「そもそも、パソコンのリース期間って最長で何年まで組めるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。このリース期間は、「法定耐用年数」と密接な関係があります。
法定耐用年数とは?
法定耐用年数とは、税法上で定められた、減価償却資産(パソコンなど)が使用に耐える年数のことです。これは実際の寿命とは異なり、あくまで税金の計算上で使われる年数です。
パソコンの法定耐用年数は、原則として「4年」です。
リース期間の決め方
税務上、リース契約が「適正」と認められるためには、この法定耐用年数を基にした期間で契約を結ぶ必要があります。具体的には、以下の計算式で算出された期間以上でなければなりません。
法定耐用年数が10年未満の場合: 法定耐用年数 × 70% ≦ リース期間
パソコン(法定耐用年数4年)に当てはめてみると…
4年 × 70% = 2.8年
となり、端数は切り捨てるため、パソコンのリース期間は最低でも2年以上で設定する必要があります。
では、最長期間はというと、法的な上限は明確に定められていません。しかし、前述の「性能の陳腐化」や「故障リスク」を考慮すると、多くのリース会社では5年や6年を上限としているのが一般的です。現実的に、5年を超えて同じパソコンを業務で快適に使い続けるのは難しいため、5年が一つの大きな区切りとなっているのです。
Q&A|パソコンのリースに関するよくある質問
ここでは、パソコンのリースを検討する際によく寄せられる質問とその回答をQ&A形式でまとめました。
結論から言うと、個人がパソコンをリース契約するのは一般的ではなく、取り扱っているリース会社もほとんどありません。
リース契約は、企業の信用情報に基づく与信審査があるため、基本的に法人や個人事業主を対象としたサービスです。個人で月額払いでパソコンを利用したい場合は、分割払いやショッピングローン、あるいは一部の家電量販店やメーカーが提供する残価設定型の購入プランなどを利用するのが一般的です。
リース期間満了後(リースアップ後)の選択肢は、主に以下の3つです。
- 物件を返却する:パソコンをリース会社に返却して契約を終了します。最も一般的な選択肢です。
- 再リースする:割安な料金(一般的に年間リース料の1/10程度)で、契約を1年延長します。まだ使えるパソコンを継続して利用したい場合に選択します。
- 買い取る:リース会社からパソコンを買い取ることも可能な場合があります。ただし、契約内容によっては買取が認められていないケースもあるため、事前の確認が必要です。
リースとレンタルの最も大きな違いは「契約の自由度」と「物件の選択肢」です。
リース | レンタル(長期) | |
---|---|---|
契約期間 | 長期(2年~5年が一般的) | 短期~長期(1ヶ月~数年) |
中途解約 | 原則不可 | 可能(規定の解約金あり) |
物件の選択 | ユーザーが自由に選べる | レンタル会社の在庫から選ぶ(新品調達も可) |
保守・修理 | ユーザー負担 | レンタル料に含まれることが多い |
「好きなスペックの新品PCを長期間、安く使いたいが、途中解約のリスクは許容できる」ならリース。
「期間や台数を柔軟に変更したい、保守まで任せたい」ならレンタル、と考えると分かりやすいでしょう。
まとめ:自社の状況に合わせ、最適なパソコン調達方法を選ぼう
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 5年リースのメリット:月額コストが最も安く、予算計画が立てやすい。
- 5年リースのデメリット:性能の陳腐化、故障リスクの増大、中途解約不可、総支払額が割高になる。
- 比較のポイント:初期費用ならリース、総額なら購入、柔軟性ならレンタルが有利。
- 新しい選択肢:リースのデメリットをカバーする「長期レンタル」も有力な選択肢となる。
結論として、パソコンの5年リースは、コストを最優先し、かつ5年間同じPCを使い続けることに何のリスクも感じない、という限定的な状況においてのみ最適な選択肢と言えるでしょう。
しかし、変化の速い現代のビジネス環境においては、多くの場合、性能の陳腐化や中途解約不可といったデメリットの方が大きくのしかかってくる可能性があります。
大切なのは、目先の月額料金の安さだけに飛びつくのではなく、自社の事業計画、業務内容、従業員の生産性、そして将来のリスクまでを総合的に考慮して、調達方法を判断することです。
ぜひ本記事を参考に、リース、購入、そしてレンタルという選択肢を比較検討し、貴社にとって本当に「お得」なパソコン導入を実現してください。