「パソコンから突然、けたたましい警告音が!」「ウイルスに感染しました。サポートに電話してください」…こんな画面が表示され、「もしかしてパソコンを遠隔操作されたかも?警察に連絡すべき?」と、心臓が凍るような思いをしていませんか?
そのような状況で冷静でいるのは、本当に難しいことですよね。パニックになってしまい、画面に表示された電話番号にかけてしまった…、言われるがままに遠隔操作を許可し、高額なサポート料金を支払ってしまった…という被害相談は後を絶ちません。
ご安心ください。この記事では、パソコンを遠隔操作されたかもしれない、と感じた時の正しい初動から、警察(サイバー警察)への相談方法と相談後の流れ、そして被害を最小限に食い止めるための具体的な対処法まで、あなたのその深い不安を解消するために、専門家の視点から網羅的に徹底解説します。
結論からお伝えすると、金銭被害や個人情報の漏洩といった実害が発生してしまった場合、警察への相談は必須です。しかし、その前にご自身でやるべき重要な対処があります。この記事を読めば、今何をすべきかが明確になり、落ち着いて行動できるようになります。
【まず落ち着いて】パソコンが遠隔操作された時の正しい対処法
偽の警告画面や警告音でパニックに陥りそうになりますが、まず被害の拡大を防ぐことが最優先です。犯人はあなたの焦りを利用して、さらなる不正行為を働こうとします。深呼吸して、以下のステップを順番に実行してください。
STEP1: ネットワークから物理的に切断する
最初にやるべきことは、インターネットからの切断です。これにより、犯人による遠隔操作を強制的に遮断し、個人情報やデータのさらなる流出、他の不正プログラムのインストールなどを防ぎます。
- Wi-Fiで接続している場合: パソコンのWi-Fi機能をオフにするか、ルーターの電源を抜いてください。
- LANケーブルで接続している場合: パソコン本体からLANケーブルを物理的に引き抜いてください。

STEP2: 偽の警告画面を閉じる
ネットワークを切断したら、次に偽の警告画面を閉じます。警告音やアナウンスがうるさい場合は、まずパソコンの音量をミュート(消音)にして落ち着いて作業しましょう。画面上の「×」ボタンは偽物で、クリックしても閉じないことが多いです。
- 【方法1】 ESCキーを長押しする
キーボードの左上にある「ESC」キーを3秒ほど長押ししてみてください。フルスクリーン表示が解除され、ブラウザ本来の「×」ボタンが表示されることがあります。表示されたらクリックして画面を閉じます。 - 【方法2】 タスクマネージャーから強制終了する
ESCキーで閉じない場合は、「Ctrl」+「Alt」+「Delete」キーを同時に押します。表示されたメニューから「タスクマネージャー」を選択し、起動しているブラウザ(Google Chrome, Microsoft Edgeなど)を選んで「タスクの終了」をクリックします。
どうしても閉じられない場合は、パソコンの電源ボタンを長押しして強制的にシャットダウンし、再起動してください。
STEP3: 状況証拠を保存する
もし可能であれば、画面を閉じる前にスマートフォンなどで警告画面の写真を撮っておきましょう。この証拠は、後で警察やクレジットカード会社に相談する際に、状況を説明するのに非常に役立ちます。
- 表示された偽の警告メッセージ全体
- 記載されていた電話番号
- 犯人とのチャット履歴(もしあれば)
- インストールさせられたソフトの名前やアイコン
- 支払いを要求された画面
STEP4: インストールされた不審なソフトを削除する
もし相手の指示に従って何らかのソフトウェアをインストールしてしまった場合は、アンインストール(削除)が必要です。特に、以下の遠隔操作ソフトは頻繁に悪用されます。
- AnyDesk
- TeamViewer
- LogMeIn Rescue
- UltraViewer
Windowsの「設定」→「アプリ」→「インストールされているアプリ」の一覧から、見覚えのないソフトや上記に該当するソフトを探し、アンインストールしてください。

【要注意】パソコンの警告音で電話してしまった場合の対処
「もう電話してしまった…」と絶望的な気持ちになっているかもしれません。しかし、まだ打つ手はあります。ここからの行動が、金銭的な被害を防げるかどうかの分かれ道です。
遠隔操作ソフトをインストールしてしまったら
もし相手の指示で遠隔操作ソフトをインストールし、操作を許可してしまった場合は、一刻も早くSTEP1で解説したネットワーク切断を実行してください。これにより、進行中の遠隔操作を強制的に中断させることができます。
そして、絶対にこれ以上相手の指示に従ってはいけません。特に、以下の要求には絶対に応じないでください。
- ネットバンキングへのログイン
- クレジットカード情報の入力
- Amazonギフト券などのプリペイドカードの購入指示
- 住所、氏名、電話番号などの個人情報の入力
サポート料金を支払ってしまったら
万が一、料金を支払ってしまった場合は、すぐに行動を起こすことで被害を回復できる可能性があります。支払方法に応じて、以下の窓口に即座に連絡してください。
- クレジットカードで支払った場合:
すぐにカード裏面に記載されているクレジットカード会社の紛失・盗難窓口に電話し、「サポート詐欺の被害に遭ったので支払いを停止してほしい」と伝えてください。「チャージバック(支払い取り消し)」という手続きを依頼できる可能性があります。 - 電子マネー・プリペイドカードで支払った場合:
AppleギフトカードやGoogle Playギフトカードなどで支払った場合は、それぞれの発行元のサポートセンターに連絡し、被害の事実を伝えてコードの利用停止を依頼してください。時間が経つと犯人に使われてしまうため、一刻を争います。 - ネットバンキングで振り込んでしまった場合:
ただちに利用している銀行の窓口に連絡してください。警察への届け出も同時に行い、「組戻し」手続きや「振り込め詐欺救済法」に基づく口座凍結・被害回復分配金の申請について相談します。

相手の指示には絶対に従わない
一度支払ってしまうと、犯人は「別のウイルスが見つかった」「より高度なセキュリティが必要」などと、次々と理由をつけて追加の支払いを要求してきます。これらは全て嘘です。
電話口の相手はマイクロソフトの社員でも、正規のサポートエンジニアでもありません。片言の日本語を話す詐欺グループの一員です。どんなに巧みな言葉で説得されても、きっぱりと電話を切り、着信を拒否してください。
パソコンを遠隔操作されたら初期化は必要?
遠隔操作をされてしまったパソコン。このまま使い続けても大丈夫なのか、不安になりますよね。結論から言うと、最も安全で確実な対処法は、パソコンの初期化(工場出荷状態に戻すこと)です。
なぜ初期化が推奨されるのか?
理由は、犯人が遠隔操作中に何を仕込んだか、完全には把握できないからです。
- 指示された遠隔操作ソフト以外に、あなたの個人情報を盗み出すスパイウェアや、キーボード入力を記録するキーロガーなどを裏でインストールされている可能性があります。
- アンインストールしただけでは、システムの深い部分に潜んだ不正なプログラムを駆除しきれない場合があります。
- 初期化は、パソコンのデータをすべて消去し、OSを再インストールするため、これらの脅威を根本から一掃できる最も確実な方法です。

初期化する前に必ずやるべきこと
初期化を行うと、パソコン内のデータはすべて消えてしまいます。慌てて初期化を始める前に、必ず以下の準備を行ってください。
- 必要なデータのバックアップ
写真、動画、仕事の書類、住所録など、消したくない重要なデータは、外付けハードディスクやUSBメモリ、クラウドストレージ(GoogleドライブやOneDriveなど)にコピーしてください。【注意点】バックアップしたデータにウイルスが紛れ込んでいる可能性もゼロではありません。バックアップ後、新しいクリーンな環境で信頼できるセキュリティソフトを使って、バックアップデータをスキャンすることをおすすめします。
- 各種サービスのID・パスワードの確認
初期化後、各種ウェブサービスやソフトウェアに再度ログインする必要があります。必要なIDやパスワードがわからなくならないよう、事前にメモしておくなどして確認しておきましょう。
パソコンの初期化手順と初期化後の対策
Windowsパソコンの初期化は、「設定」→「更新とセキュリティ」(Windows 10)または「システム」(Windows 11)→「回復」から行うのが一般的です。「このPCを初期状態に戻す」を選択し、画面の指示に従ってください。
もし手順に不安がある場合は、無理せずパソコンメーカーのサポートに問い合わせるか、専門の修理業者に依頼しましょう。
【初期化後に必ず行うこと】
- Windows Updateを実行し、OSを最新の状態にする。
- 信頼できるセキュリティ対策ソフトを導入し、最新の状態に更新する。
- 遠隔操作された可能性がある間に利用したウェブサービス(特にネットバンキングやSNSなど)のパスワードをすべて変更する。
サイバー警察に相談したらどうなる?解決できる?
「警察に相談すれば、犯人を捕まえてくれて、騙し取られたお金も返ってくるはずだ」と期待する方も多いかもしれません。しかし、現実には少し異なります。サイバー警察の役割と、相談後の流れを正しく理解しておくことが重要です。
結論として、警察は捜査や犯人の逮捕に向けて動いてくれますが、支払ったお金を直接取り返してくれるわけではありません。それでも、警察に相談・通報することは非常に重要です。
警察(サイバー警察)の役割とは?
警察の主な役割は、事件の捜査と犯人の検挙、そして再発防止です。
- 捜査と犯人検挙: あなたが提出した被害届や証拠をもとに、犯人グループの特定や拠点の割り出しといった捜査を行います。サポート詐欺は海外に拠点を置くグループが多いため、捜査は困難を極めますが、検挙に至るケースもあります。
- 再発防止への貢献: あなたからの通報内容は、警察が詐欺の手口を分析し、社会全体へ注意喚起を行うための貴重な情報源となります。
- 対処法のアドバイス: 被害後の具体的な対処や、今後のセキュリティ対策について専門的なアドバイスをもらうことができます。
相談・通報する大きなメリット
お金が直接返ってこないと聞くと、相談するのをためらってしまうかもしれません。しかし、相談には以下のような大きなメリットがあります。
- 被害の公的な証明になる: 警察に被害届を提出すると「受理番号」が発行されます。これが、あなたが詐欺被害に遭ったことの公的な証明になります。
- 返金交渉が有利になる可能性: クレジットカード会社などに支払停止(チャージバック)を依頼する際、「警察に被害届を提出済みです(受理番号は〇〇です)」と伝えることで、手続きがスムーズに進むケースがあります。
- 次の被害者を減らせる: あなたの通報が、同じ手口による新たな被害者を防ぐことにつながります。社会全体で詐欺と戦う上で、一人ひとりの通報が大きな力になるのです。

結局、お金は返ってくるの?
残念ながら、警察が犯人から直接お金を取り立てて、あなたに返してくれることはありません。これは「民事不介入」という警察の原則によるものです。
返金を求めるには、まずクレジットカード会社や電子マネー発行元、銀行といった決済事業者に相談し、補償や救済措置を求めるのが第一です。犯人が逮捕された後に、別途「損害賠償請求」という形で民事訴訟を起こす道もありますが、時間も費用もかかり、現実的には非常にハードルが高いのが実情です。
【どこに連絡?】サイバー警察の相談窓口と連絡方法
いざ警察に相談しようと思っても、「どこに電話すればいいの?」と迷ってしまいますよね。緊急性がなければ、いきなり110番や交番に行くのではなく、まずは専門の相談窓口に電話で事前連絡をするとスムーズです。
相談する前に準備するものリスト
警察に相談に行く際は、以下のものを準備しておくと話がスムーズに進みます。記憶が曖昧になる前に、できるだけ詳しくまとめておきましょう。
- 被害の経緯を時系列でまとめたメモ (いつ、どのサイトを見ていて、どんな画面が出て、どこに電話し、何をされたか)
- 偽の警告画面のスクリーンショットや写真
- 犯人の電話番号、振込先口座情報、ウェブサイトのURLなど
- 支払いを証明する資料 (クレジットカードの利用明細、電子マネーの購入レシートやカード本体など)
- インストールさせられたソフトの名前がわかるもの
- 身分証明書と印鑑 (被害届を提出する場合に必要)
全国共通の相談窓口と地域の窓口
状況に応じて、以下の窓口に連絡してください。
- 警察相談専用電話「#9110」
どこに相談してよいか分からない場合に、まずかけるべき全国共通の番号です。事件性の有無にかかわらず、警察に関わることで困ったらここに電話すれば、適切な窓口を案内してもらえます。 - 都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口
各都道府県警察本部には、サイバー犯罪を専門に扱う相談窓口が設置されています。専門の警察官が対応してくれるため、話が早く進みます。「〇〇県警 サイバー犯罪相談窓口」で検索すれば、連絡先が見つかります。オンラインでの通報や相談を受け付けている警察本部もあります。 - 最寄りの警察署
もちろん、最寄りの警察署に直接相談することも可能です。ただし、担当者が不在の場合もあるため、事前に電話で「サイバー犯罪の被害について相談したい」とアポイントを取っておくことを強く推奨します。

警察以外の公的な相談窓口
警察だけでなく、以下の公的機関もあなたの状況に応じた専門的なサポートを提供しています。合わせて相談することを検討してください。
- IPA(情報処理推進機構)安心相談窓口
「偽の警告画面の閉じ方がわからない」「遠隔操作ソフトの削除方法を教えてほしい」といった、技術的な相談はこちらが専門です。
電話番号: 03-5978-7509 - 消費者ホットライン「188(いやや!)」
「詐欺的な契約をしてしまった」「返金交渉について相談したい」など、消費生活全般に関するトラブルはこちらに相談できます。最寄りの消費生活センターを案内してくれます。
Q&A|遠隔操作と警察に関するよくある質問
金銭的な被害や、住所・氏名などの詳細な個人情報を教えていなければ、緊急性は比較的低いです。まずはこの記事で紹介したパソコンの対処(不審なソフトの削除、ウイルススキャンなど)を優先してください。それでも「電話番号を知られてしまったのが不安」「脅迫めいたことを言われた」など、どうしても心配な場合は、警察相談専用電話「#9110」に電話してアドバイスを求めると良いでしょう。
その可能性は否定できません。犯人が遠隔操作をしている間に、パソコン内に保存されていたファイル(住所録、家計簿、写真など)や、ブラウザに保存されていたID・パスワードなどを盗み見た可能性があります。万全を期すため、被害後に各種ウェブサービスのパスワードを変更しておくことを強く推奨します。特に、金銭が絡むネットバンキングやオンラインショッピングサイトのパスワードは最優先で変更してください。
そもそも、あなたを騙して結ばせた契約なので、法的に有効な契約ではありません。したがって、クーリングオフという概念以前に無効を主張できます。しかし、相手は詐欺グループですから、素直に返金に応じることはまずありません。返金については、警察や消費者センターに相談しつつ、クレジットカード会社などの決済事業者に働きかけるのが現実的なルートとなります。
はい、あります。以下の基本的なセキュリティ対策を徹底することが、被害を防ぐ最大の防御策となります。
- OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ: セキュリティ上の弱点(脆弱性)が修正されるため、アップデート通知が来たら必ず実行しましょう。
- 信頼できるウイルス対策ソフトを導入する: 導入するだけでなく、ウイルス定義ファイルを常に最新の状態に保つことが重要です。
- 怪しい広告やリンクはクリックしない: 「当選しました!」といった甘い誘いや、興味を煽るような広告には罠が潜んでいることがあります。
- 警告画面を信じない: ブラウザに表示される「ウイルスに感染しました」という警告や、電話を促すメッセージは100%偽物だと考えてください。正規のセキュリティソフトは、アプリ内で警告を表示し、外部に電話をかけさせるようなことは絶対にありません。
まとめ:冷静な初期対応と勇気ある相談があなたを守ります
この記事では、パソコンを遠隔操作されたかもしれないと不安に感じているあなたへ、具体的な対処法から警察への相談方法までを詳しく解説してきました。
最後に、最も重要なポイントを振り返りましょう。
- 【最優先の行動】偽の警告が出たら、まずネットワークを切断し、警告画面を閉じる。絶対に表示された電話番号にはかけないこと。
- 【電話・支払い後】お金を支払ってしまったら、すぐにカード会社・銀行等と警察に連絡する。
- 【パソコンの処置】遠隔操作されたPCは、安全のためバックアップを取った上で初期化を強く推奨。
- 【警察への相談】金銭被害など実害があれば必ず相談を。返金が目的ではなく、事件の記録と被害拡大防止のためと心得る。
突然のトラブルに、本当に怖い思いをされたことと思います。しかし、正しい知識を持ち、一つひとつ冷静に対処すれば、被害を最小限に食い止めることは十分に可能です。
この記事が、あなたの不安を和らげ、次の一歩を踏み出すための助けとなれば幸いです。そして、今後の安全なインターネット利用のために、ぜひセキュリティ対策の見直しを行ってみてください。