新しく家電を購入した際や引越し時、「アース線」の接続を面倒に感じていませんか?「家電のアースをつけなくても大丈夫だろう」と、そのまま使用しているケースもあるかもしれません。
しかし、アース線を接続しないことには、感電・火災・故障といった、見過ごすことのできない重大な危険が潜んでいます。
この記事では、家電のアースをつけないことで起こりうる3つの主要なリスクと、アースの正しい接続方法、さらには「アース端子がない」「線が短い」といった具体的な悩みへの対処法まで、分かりやすく解説します。
この記事を読めば、アースの必要性を正しく理解し、安全に家電を使い続けるための知識が身につきます。
※2025年11月16日 記事の内容を最新の情報に更新しました。
アース線をつけないとどうなる?
結論から言うと、アース線をつけないと非常に危険です。アース線は、家電製品を安全に使うために不可欠な役割を担っています。
もしアース線を正しく接続していない場合、以下のような3つの重大なリスクを引き起こす可能性があります。
危険性1:感電のリスク
最も恐ろしいのが「感電」です。家電が古くなったり故障したりすると、内部の電気が外側の金属部分などに漏れる「漏電(ろうでん)」が発生することがあります。
アース線が接続されていない状態で漏電した家電に触れると、漏れた電気が人体を通り抜けて地面に流れようとし、激しい衝撃を受けることになります。これが感電です。
特に、水回りで使用する家電は体が濡れている可能性も高く、電気抵抗が下がるため、感電した場合に命に関わる重大な事故につながりやすくなります。
危険性2:火災発生の可能性
漏電は火災の原因にもなります。漏れた電気が家電内部や周辺のホコリに流れ続けると、そこから発熱・発火し、漏電火災を引き起こす恐れがあります。
アース線が接続されていれば、漏れた電気はすぐに地面に逃げるため、火災のリスクを大幅に低減できます。コンセントにアースをつけない状態は、火災のリスクを放置していることにもなるのです。
危険性3:家電の故障やノイズ
漏電は、家電製品そのものにもダメージを与えます。漏れた電気が内部の精密な電子回路に異常な電流を流し、基板を損傷させることがあります。
これにより、家電が突然故障したり、寿命が縮んだりする原因となります。また、テレビの映像が乱れたり、オーディオ機器に「ジー」といったノイズが入ったりする原因が、アース接続不良であるケースも少なくありません。
アース線の役割とは?
アース線(接地線)の役割を正しく理解しておきましょう。
アースは電気の逃げ道
アース線の役割は、家電製品から漏れた電気を安全に地面(Earth)へ逃がすための「電気の逃げ道」を作ることです。
万が一漏電が発生しても、アース線が正しく接続されていれば、電気は人体ではなく抵抗の低いアース線を通って地面に流れます。これにより、感電や火災といった事故を未然に防ぐことができます。

アース接続は義務か
日本では、法律(電気用品安全法や関連省令)により、特に水気や湿気の多い場所で使用する家電製品には、アース(接地)を施すことが強く推奨、あるいは義務付けられています。(参照:経済産業省 電気用品安全法)
罰則がないから「つけなくてもいい」という訳ではなく、安全のために必須の措置と考えるべきです。
アース接続が必要な家電
すべての家電にアース線が必要なわけではありませんが、特に接続が強く推奨される家電製品を知っておきましょう。
水気や湿気の多い場所
感電リスクが特に高いため、アース接続が必須とされる家電です。
- 洗濯機、衣類乾燥機
- 冷蔵庫、冷凍庫
- 食器洗い乾燥機
- 温水洗浄便座(ウォシュレットなど)
高電圧や高出力の製品
漏電した際の危険性が高いため、接続が推奨される家電です。
- 電子レンジ、オーブンレンジ
- エアコン(特に室外機)
- 井戸のポンプ
アース線の正しい接続方法
アース線の接続は、ポイントさえ押さえれば難しくありません。安全のために正しい手順で行いましょう。
アース端子がある場合
壁のコンセントにアース端子(アースターミナル)がある場合の基本的な手順です。
- 安全確認:作業前に、必ず家電の電源プラグをコンセントから抜く
- アース線の準備:アース線の先端の被覆(ビニール)をむき、中の銅線を露出させる
- 端子カバーを開ける:コンセント側のアース端子のカバーを開け、ネジを緩める
- 接続する:アース線の銅線をネジに巻き付け、ネジをしっかりと締める
- カバーを閉じる:端子のカバーを元に戻して完了
接続時の注意点
アース線を接続する際は、以下の点に注意してください。
- 必ず電源プラグを抜いてから作業する
- ネジは緩すぎず、強すぎず、銅線がしっかり固定される力で締める
- 銅線が端子からはみ出さないようにする

アース端子がない時の対処法
「いざ接続しようとしたら、コンセントにアース端子がない」という場合も多いですよね。その場合の対処法を解説します。
最適解はアース工事
最も安全で確実な方法は、電気工事店に依頼してアース端子付きコンセントの増設工事をしてもらうことです。
アース工事は「電気工事士」の資格が必要な専門作業です。費用はかかりますが、漏電や感電のリスクを根本から解消できるため、特に水回りの家電には強く推奨されます。
漏電ブレーカーを使う
賃貸住宅などで工事が難しい場合の次善策として、「漏電ブレーカー(漏電遮断器)付きの延長コードやタップ」を使用する方法があります。
これは、漏電を検知すると自動的に電気を遮断してくれる装置です。アースの代わりにはなりませんが、感電事故のリスクを大幅に軽減する効果が期待できます。
ただし、これはあくまで簡易的な対策であり、アース接続に勝るものではないことを理解しておきましょう。
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アース線の延長は危険か
「家電のアース線が短くて届かない」という悩みもよく聞かれます。アース線の延長は適切に行えば可能ですが、誤った方法は危険です。
延長が危険とされる理由
「アース線 延長 危険」 と検索されるように、延長にはリスクが伴います。危険とされる主な理由は、接続不良による機能不全です。
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- ビニールテープで巻いただけの接続:接触不良や、時間経過によるテープの劣化で外れる恐れ
- 細すぎる電線の使用:漏電時に大電流が流れると、線が耐えられず発熱・発火する恐れ
いざという時にアースが機能しなければ、接続していないのと同じです。
安全に延長する方法
アース線を安全に延長するには、以下の方法があります。
- アース線延長コードの使用:市販されている専用の延長コードを使うのが最も簡単で安全
- 圧着端子による接続:専用の工具(圧着ペンチ)とスリーブ(端子)を使い、電線同士を強固に接続する
- より長いアース線への交換:家電本体のアース線を、十分な長さと太さのものに交換する(知識が必要)
延長部分が露出しないよう、接続部は必ず絶縁処理(絶縁テープや収縮チューブ)を適切に行ってください。
アース接続の禁止事項
アース端子がないからといって、絶対にアース線を接続してはいけない場所があります。これらは命に関わる重大な事故につながるため、厳禁です。
ガス管や水道管は厳禁
- ガス管:絶対に接続しないでください。漏電した電気がガス管に流れると、引火・爆発する最悪の事態を招きます。
- 水道管:近年の水道管は樹脂製(塩ビ管)のものが多く、電気が流れないためアースとして機能しません。古い金属管であっても、接続部が絶縁体である可能性があり、確実な接地が期待できません。
- 電話線や避雷針のアース:通信機器の故障や、落雷時に逆に電気が逆流する危険があるため、絶対に使用しないでください。
よくある質問(Q&A)
最後に、家電のアースに関するよくある疑問にお答えします。
Q. アース線が2本(緑と黄)ありますが、どちらを使えばいいですか?
アース線は通常1本(緑色)ですが、エアコンなどで2本(緑と黄)ある場合、それはアース線ではなく室内機と室外機をつなぐ「渡り線」である可能性が高いです。アース線は緑色の単線であることが一般的です。取扱説明書をよく確認してください。
Q. アース線がなくても動くなら、つけなくてもいいですか?
アース線は「平常時に家電を動かすため」のものではなく、「異常時(漏電時)に安全を確保するため」のものです。動くから安全、ではありません。万が一の事故を防ぐために、必ず接続してください。
Q. アース線を接続したら、ビリビリ感がなくなりました。
それは、その家電がすでに漏電していた可能性が非常に高い状態です。アース線を接続したことで、漏れていた電気が人体ではなくアースに流れるようになり、ビリビリ感じなくなったのです。直ちにその家電の使用を中止し、メーカーや修理業者に点検を依頼してください。
まとめ:家電のアースは命と財産を守る安全線
「家電のアースをつけない」という選択が、感電、火災、家電の故障という3つの重大なリスクを抱えていることをご理解いただけたでしょうか。
特に水回りで使用する家電や、高出力の家電にとって、アース接続は必須の安全対策です。
もしご自宅のコンセントにアース端子がない場合でも、諦めないでください。「電気工事店への相談」や「漏電ブレーカーの活用」など、安全性を高める方法はあります。
面倒に思えるアース接続ですが、それはあなた自身とご家族の命、そして大切な財産である家電を守るための重要な作業です。ぜひこの機会に、ご自宅の家電のアース接続状況を点検してみましょう。
