「背景をふんわりボカした写真を撮りたいのに、なぜかF値が下がらない…」
「カメラの本にはF1.8に設定すると書いてあるのに、自分のカメラはF3.5より下にいかない!」
一眼レフカメラを手にしたばかりのころ、こんな壁にぶつかった経験はありませんか?
実はその現象、カメラの故障ではありません。ほとんどの場合、レンズの特性やカメラの簡単な設定が原因です。
この記事では、カメラのF値が下がらない主な原因とその解決策を、初心者の方にも分かりやすく解説します。原因を正しく理解すれば、誰でも簡単におしゃれなボケ写真が撮れるようになりますよ。
そもそもF値とは?基本をおさらい
原因を探る前に、まず「F値(えふち)」の基本について簡単におさらいしましょう。
F値とは、レンズがカメラに光を取り込む量を数値化したものです。絞り値とも呼ばれます。この数値を変えることで、写真の明るさと「ボケ感」をコントロールできます。
- F値を小さくする(絞りを開く) → 光を多く取り込む → 写真が明るくなり、背景がボケやすくなる
- F値を大きくする(絞りを絞る) → 光を少なく取り込む → 写真が暗くなり、全体にピントが合いやすくなる
つまり、あのプロが撮ったような「背景がふんわりボケた写真」を撮るには、このF値をできるだけ小さくする必要がある、ということですね。
カメラのF値が下がらない!考えられる5つの原因
「理屈はわかったけど、それでもF値が下がらない!」という方へ。考えられる原因は、主に以下の5つです。一つずつチェックしていきましょう。
- 使っているレンズの限界(最小F値)
- ズームするとF値が変わるレンズの仕様
- 撮影モードが「絞り優先」になっていない
- レンズとカメラボディの組み合わせが不適切
- 自分のレンズのF値を知らない
ほとんどの場合、①か②が原因です。詳しく見ていきましょう。
原因1:使っているレンズの「最小F値」の限界
最もよくある原因が、使っているレンズが物理的にそれ以上F値を下げられない、というものです。
レンズにはそれぞれ、「どこまでF値を小さくできるか」という限界値(最小F値または開放F値)が決まっています。例えば、カメラ購入時にセットで付いてくる「キットレンズ」の多くは、「F3.5-5.6」といった表記がされています。これは、「このレンズで設定できる最も小さいF値は3.5ですよ」という意味。どんなに頑張っても、このレンズでF1.8やF2.8といった設定にすることはできません。
F1.8まで下げたいのであれば、「F1.8」と書かれたレンズを使う必要があります。
原因2:ズームするとF値が変わるレンズの仕様
「さっきまでF3.5にできたのに、被写体に寄ろうとズームしたらF5.6までしか下がらなくなった!」という経験はありませんか?
これもレンズの仕様です。特に安価なズームレンズによく見られる特徴で、ズームして望遠側にすると、最小F値が大きくなってしまうのです。
ちなみに、ズームしても最小F値が変わらない高性能なレンズもあります。これらは「通しレンズ」(例: F2.8通し)と呼ばれますが、価格が非常に高価になる傾向があります。
原因3:撮影モードが「絞り優先」になっていない
カメラの撮影モードダイヤルが「P(プログラムオート)」や「S(シャッタースピード優先)」になっていませんか?
これらのモードでは、F値の変更に制限があったり、カメラが自動でF値を決めてしまったりすることがあります。F値を自分で自由にコントロールしてボケ感を楽しみたい場合は、撮影モードを「A」または「Av」(絞り優先オート)に設定しましょう。
このモードにすれば、あなたが設定したF値に合わせて、カメラが最適なシャッタースピードを自動で決めてくれます。
原因4:レンズとカメラボディの組み合わせが不適切
少しマニアックな話になりますが、カメラの「センサーサイズ」とレンズの種類が合っていない場合も、性能を100%引き出せないことがあります。
例えば、プロ向けの「フルサイズ」という大きなセンサーを搭載したカメラに、初心者向けモデルに多い「APS-C」という小さなセンサー用のレンズを装着すると、カメラが自動的に性能を制限する(クロップ機能)ことがあります。これにより意図せず画角が狭まったり、F値の挙動が変わったりすることがあります。
原因5:自分のレンズのF値を知らない
そもそも、自分の持っているレンズの最小F値がいくつなのか、ご存知ですか?確認方法は簡単です。
もっとF値を下げたい!背景をボカすための解決策
原因がわかったところで、次はいよいよ解決策です。「もっと背景をボカしたエモい写真を撮りたい!」という願いを叶えるための具体的な方法をご紹介します。
解決策1:絞り優先モード(A or Av)でズームせず撮る
まず、今すぐできる最も簡単な方法です。
お使いのズームレンズで最もF値を下げられるのは、一番ズームしていない広角側です。撮影モードを「A(Av)」にして、一番広角側(例えば18mm)でF値を最小(例えばF3.5)に設定してみてください。その上で、自分が被写体に近づいたり離れたりして構図を決めれば、キットレンズでも背景を最大限ボカすことができます。
解決策2:F値の低い「単焦点レンズ」を手に入れる【一番のおすすめ】
背景のボケ味にこだわるなら、単焦点レンズの導入が一番の近道です。
単焦点レンズとは、ズームができない代わりに、F値が非常に小さい(F1.8やF1.4など)レンズのこと。キットレンズとは比べ物にならないくらい、とろけるような美しいボケが手軽に表現できます。また、解像度も高く、写真全体が驚くほどシャープに写ります。「写真が急に上手くなった!」と感じるほどの変化に、きっと感動するはずです。
初心者におすすめ!最初の単焦点レンズの選び方
「単焦点レンズが良いのはわかったけど、どれを選べばいいの?」という方のために、選び方のポイントと、特におすすめのレンズタイプをご紹介します。
ポイント1:焦点距離は「標準」画角を選ぶ
最初の1本として絶大な人気を誇るのが、「50mm(35mm換算)」の標準単焦点レンズです。
人間が見た景色に近い自然な画角で、スナップ、ポートレート、カフェでのテーブルフォトなど、幅広いシーンで活躍します。非常に使い勝手が良いため、「神レンズ」と呼ばれることも。
ポイント2:価格と性能のバランスで選ぶ
標準単焦点レンズは、各メーカーが「最初の交換レンズ」として位置づけていることが多く、驚くほど安価で高性能な製品が多いのが特徴です。「撒き餌(まきえ)レンズ」とも呼ばれ、レンズ交換の楽しさを知るには最適な1本です。
【厳選3選】最初に買うべき単焦点レンズのタイプ
数あるレンズの中から、初心者の方がまず検討すべきタイプを3つに絞りました。
- 初心者向け・コスパ最強タイプ:「F1.8」の標準単焦点
各メーカーが用意している、最も安価な標準単焦点レンズです。1万円~3万円台で購入できるものが多く、キットレンズからのステップアップには最適。圧倒的なボケと描写力に驚くこと間違いなしです。 - 描写力重視タイプ:「F1.4」の標準単焦点
F1.8のレンズより一段と明るく、より大きなボケが楽しめる上位モデル。価格は少し上がりますが、暗い場所での撮影に強く、とろけるような美しいボケ味は格別です。 - スナップ撮影特化タイプ:「F2」の薄型単焦点
「パンケーキレンズ」とも呼ばれる、非常に薄くて軽いレンズ。カメラの携帯性が格段に上がり、気軽にスナップ撮影を楽しみたい方におすすめです。ボケの大きさは控えめですが、シャープな写りが魅力です。
迷ったら、まずは各メーカーが出している「F1.8」の標準単焦点レンズを選べば間違いありません。
レンズを買う前に試したいなら「レンタル」がおすすめ!
「いきなり買うのは不安…」「自分の撮影スタイルに合うか試してみたい」という方には、カメラ機材のレンタルサービスがおすすめです。気になる単焦点レンズを数日間レンタルして、その写りを実感してみてはいかがでしょうか。

F値が下がらない時によくある質問(Q&A)
A. いいえ、撮れます。望遠側(例えば55mm)で撮影し、被写体にできるだけ近づき、背景をできるだけ遠ざける「3つのテクニック」を駆使すれば、キットレンズでもボケを作り出すことは可能です。ただし、単焦点レンズのF1.8などで撮れるボケの大きさには及びません。
A. ズームしても最小F値が変わらないレンズのことです。例えば「70-200mm F2.8」というレンズは、70mmでも200mmでも最小F2.8で撮影できます。プロ用のレンズに多く、非常に高価ですが、どんな焦点距離でも明るさを維持できるため、撮影の自由度が格段に上がります。
A. ズームができないことです。構図を変えるためには、自分が前後に動く必要があります。これを「足ズーム」と呼び、不便に感じることもありますが、逆にフットワークが軽くなり、構図を考える力が養われるというメリットにもなります。
A. 背景は大きくボケますが、ピントが合う範囲(被写界深度)が極端に浅くなります。ポートレートで目にピントを合わせたつもりが、鼻にピントが合ってしまった、ということが起こりやすくなります。ピント合わせがシビアになる点は注意が必要です。
A. レンズには「最短撮影距離」という、ピントが合う限界の距離があります。これ以上近づくと、シャッターが切れなくなります。もし寄れないと感じたら、少し被写体から離れてみてください。もっと寄って撮りたい場合は、「マクロレンズ」という専用レンズが必要になります。
A. 「1:」の後の数字が、そのレンズの最小F値(開放F値)を表します。「1:1.8」ならF1.8まで、「1:3.5-5.6」なら広角側でF3.5、望遠側でF5.6までF値を下げられる、という意味です。
A. 使える場合が多いですが、おすすめはしません。カメラが自動的にAPS-Cサイズに合わせて撮影範囲を狭める「クロップモード」になり、カメラ本来の画素数や画質を活かせなくなります。基本的にはカメラのセンサーサイズに合ったレンズを使いましょう。
A. 撮影モードが「P(プログラムオート)」やシーンモードになっていませんか?これらのモードでは、カメラが「暗いから光を多く取り込もう」と判断し、自動的にF値を最小にしてしまうことがあります。意図せず設定が変わるのを防ぐには、「A(絞り優先)」や「M(マニュアル)」モードを使いましょう。
A. 各メーカーに素晴らしい特徴があり、一概に「ここが一番」とは言えません。デザイン、色味、操作性など、ご自身の好みに合うかが重要です。
カメラメーカーのおすすめや、趣味で始めたい初心者向けのメーカー紹介記事を参考に、ご自身のスタイルに合ったメーカーを探してみてください。


もし使わない機材が出てきたら、カメラの買取サービスを利用して、新しい機材の購入資金にするのも賢い方法です。

A. これらは写真の明るさを決める「露出の3要素」と呼ばれます。F値(絞り)で光の通る穴の大きさを、シャッタースピードで光を取り込む時間を、ISO感度で光を電気信号に増幅する度合いを調整します。この3つのバランスで写真の明るさが決まります。最初は難しいですが、一つずつ役割を理解していくのが上達の近道です。
まとめ:レンズの仕組みを理解して、思い通りの写真を撮ろう!
今回は、「カメラのF値が下がらない」という初心者がつまずきがちな問題について、その原因と解決策を詳しく解説しました。
F値が下がらないのは、故障ではなくレンズの仕様やカメラの設定が原因です。
- 原因の多くはレンズの最小F値の限界や、ズームによるF値の変動。
- 今すぐできる対策は、「絞り優先モード」で「広角側」で撮ること。
- 理想のボケを手に入れる最強の解決策は、「単焦点レンズ」を導入すること。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、レンズの仕組みがわかると、カメラはもっともっと楽しくなります。まずはご自身のレンズの性能を確認し、設定を見直してみてください。
そして、もし写真の表現力を一気にステップアップさせたいなら、ぜひ単焦点レンズの世界に足を踏み入れてみてください。きっと、あなたのカメラライフが何倍も豊かになりますよ!
あなたのカメラライフでの悩みや、お気に入りのレンズがあればぜひコメントで教えてくださいね!
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