事業効率化のためにポータブル電源の購入を検討しているけど、「経費でどう処理すればいいの?」「耐用年数って何年で計算するんだろう?」と悩んでいませんか?
特に、国税庁が定める耐用年数については、正しく理解しておかないと後々の税務処理で困ってしまう可能性があります。
この記事では、ポータブル電源の経費計上に欠かせない国税庁の定める法定耐用年数から、取得価格に応じた具体的な経費処理方法まで、誰にでも分かるように徹底解説します。
最後まで読めば、あなたの会社の状況に合った最適な節税方法が見つかりますよ。
ポータブル電源の法定耐用年数は国税庁の通達で6年
結論から言うと、国税庁の定めるポータブル電源の法定耐用年数は「6年」です。
これは、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」において、ポータブル電源が「建物附属設備」の中の「電気設備(照明設備を含む)」、さらにその中の「蓄電池電源設備」に分類されるためです。
事業目的で購入した10万円以上のポータブル電源は、この法定耐用年数である6年にわたって減価償却を行い、経費として計上していくのが基本的なルールとなります。

実際の寿命(サイクル数)との違い
税法上の「法定耐用年数6年」は、実際のポータブル電源が使用できる期間(物理的な寿命)とは異なります。
ポータブル電源の実際の寿命は、主に内蔵されているバッテリーの「サイクル数」によって決まります。
サイクル数とは、バッテリーを0%から100%まで充電して、放電しきるまでを1サイクルとしてカウントするものです。
例えば、サイクル数が4,000回のリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載したモデルなら、毎日充放電を繰り返しても10年以上使える計算になります。
法定耐用年数の6年を過ぎても、製品が壊れない限りは問題なく使い続けることができます。
ポータブル発電機との耐用年数の違いは?
よく似た製品に「ポータブル発電機」がありますよね。
ガソリンなどを燃料として電気を作り出す発電機は、税法上「機械及び装置」に分類され、用途によって10年などの耐用年数が適用される場合があります。
しかし、本記事で解説している、バッテリーに電気を蓄えて使用するタイプの「ポータブル電源」は、「蓄電池電源設備」として耐用年数は6年と覚えておきましょう。
【価格別】ポータブル電源の経費計上方法は4つ
ポータブル電源の経費計上方法は、1台あたりの取得価格によって4つのパターンに分かれます。
「10万円」が大きな分岐点となり、それ以上になると資産として計上し、減価償却を行う必要があります。
しかし、中小企業者等には特例も用意されているので、自社に最も有利な方法を選択することが重要です。
10万円未満:消耗品費として一括経費計上
取得価格が10万円未満のポータブル電源は、「消耗品費」などの勘定科目を使って、購入した年度に全額を経費として計上できます。
最もシンプルで分かりやすい方法です。
固定資産台帳への登録も不要なので、経理処理の手間がかかりません。
10万円以上:固定資産として6年で減価償却
取得価格が10万円以上のポータブル電源は、原則として「固定資産」として資産計上し、法定耐用年数である6年にわたって減価償却を行います。
減価償却とは、取得にかかった費用を耐用年数に応じて分割し、毎年少しずつ経費として計上していく会計処理のことです。
計算方法には「定額法」と「定率法」があり、どちらを選択するかは事業形態によって異なります。
- 定額法:毎年、同じ金額を償却する方法。(個人事業主の原則)
- 定率法:初年度の償却額が最も大きく、年々減少していく方法。(法人の原則)

20万円未満:一括償却資産で3年均等償却
取得価格が10万円以上20万円未満の場合、「一括償却資産」という特例を選択できます。
これは、法定耐用年数(6年)にかかわらず、3年間で均等に分割して経費計上する方法です。
通常の減価償却よりも短い期間で経費化できるため、早期に節税効果を得られるメリットがあります。
さらに、一括償却資産として処理した資産は、固定資産税の一種である「償却資産税」の課税対象から外れるという大きなメリットもあります。
30万円未満:少額減価償却資産で即時償却
青色申告をしている中小企業者等であれば、取得価格が10万円以上30万円未満の場合に「少額減価償却資産の特例」を利用できます。
この特例を使うと、なんと購入した年度に全額を一括で経費として計上(即時償却)することが可能です。
その年の利益を大きく圧縮できるため、非常に節税効果の高い方法ですが、適用には要件があり、2025年度末までの期間限定の制度となっています。
器具備品?機械装置?国税庁の耐用年数表での分類
経費処理をする上で「どの勘定科目にすればいいの?」と迷う方も多いですよね。
特に「器具備品」や「機械装置」と混同しやすいですが、国税庁の耐用年数表におけるポータブル電源の正しい分類は、前述の通り「建物附属設備」の「蓄電池電源設備」です。
なぜ「器具備品」や「機械装置」ではないのか
では、なぜ「器具備品」や「機械装置」には該当しないのでしょうか?
まず、「器具備品」は、他の分類に当てはまらない、事業のために使用する比較的小規模な物品(例:机、椅子、パソコン)が該当します。
ポータブル電源には「蓄電池電源設備」という明確な分類があるため、器具備品にはなりません。
次に、「機械装置」は、主に製造業などで製品を作るために使われるような、複数の部品から構成される設備を指します。
一般的な事業所で利用するポータブル電源は、この定義には当てはまらないと解釈するのが一般的です。

減価償却資産の耐用年数表(国税庁)を見る際の注意点
ポータブル電源を経費計上する際、取得価額がいくらになるかで処理方法が変わるため、その金額の判断が非常に重要になります。
特に注意したいのが「税込・税抜の判断」と「セット購入時の考え方」です。
取得価額の判断(税込?税抜?)
10万円未満かどうかを判断する取得価額は、自社が採用している会計処理の方法によって、税込で判断するか、税抜で判断するかが変わります。
- 税抜経理方式を採用している場合:税抜きの本体価格で判断します。
- 税込経理方式を採用している場合:税込みの支払総額で判断します。
例えば、税抜98,000円(税込107,800円)のポータブル電源を購入した場合、税抜経理なら「10万円未満」で消耗品費、税込経理なら「10万円以上」で資産計上となり、処理が全く異なります。
ソーラーパネルとのセット購入の考え方
最近では、ソーラーパネルとセットで販売されているポータブル電源も多いですよね。
この場合、取得価額はセット価格で判断するのか、それぞれ単体で判断するのか迷うところです。
固定資産の考え方では、「一体として機能するもの」はその単位で取得価額を判断するのが原則です。
しかし、ポータブル電源とソーラーパネルはそれぞれ単独でも機能するため、個別に減価償却を行うべきという見方もあります。
この判断は非常に難しいため、迷った場合は税理士や管轄の税務署に相談することを強く推奨します。
ポータブル電源の耐用年数に関するQ&A
最後に、ポータブル電源の法定耐用年数や経費計上について、よくある質問をまとめました。
中古資産を取得した場合、法定耐用年数ではなく、その資産を事業で使用できると見積もられる残りの年数を耐用年数として減価償却を行います。
ただし、残りの使用可能年数の見積もりが難しい場合は、法定耐用年数から経過年数を差し引くなどの簡便法を用いて計算することも認められています。
いいえ、そんなことはありません。
法定耐用年数は、あくまで減価償却を計算するための税法上の年数です。
6年経過後も、製品が物理的に壊れていなければ、もちろん事業で使い続けることができます。
適切なメンテナンスを行えば、法定耐用年数以上に長く活躍してくれるでしょう。
取得価額によって異なります。
- 10万円未満の場合:「消耗品費」や「事務用品費」などの費用科目で処理します。
- 10万円以上の場合:「建物附属設備」または「器具備品」として固定資産台帳に登録します。
どちらの勘定科目を使うかは、会社の経理規定によりますが、一度決めた処理方法は継続して適用する必要があります。
まとめ:ポータブル電源の耐用年数を理解して正しく経費計上しよう
いかがでしたか?ポータブル電源の経費計上について、理解が深まったのではないでしょうか。
この記事の重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- ポータブル電源の法定耐用年数は国税庁の定めにより「6年」。
- 取得価格が10万円未満なら「消耗品費」として一括経費に。
- 10万円以上でも、20万円未満や30万円未満なら節税効果の高い特例が使える。
- 取得価額の判断は、自社の経理方式(税込 or 税抜)を確認することが重要。
ポータブル電源は、屋外での作業や災害時のバックアップ電源として、今やビジネスに欠かせないアイテムです。
この記事を参考に、自社に合った最適な経費処理方法を選択し、賢く節税しながら事業をさらに加速させてくださいね。