「ウイルスに感染しました」
突然、あなたのパソコンからけたたましい警告音が鳴り響き、画面にはこんな不気味なメッセージが…。パニックになり、画面に表示されたサポート窓口の電話番号に、思わず電話してしまったのではないでしょうか?
「言われるがままにパソコンを操作してしまった…」
「クレジットカードの番号を教えてしまったかもしれない…」
「遠隔操作されたらどうしよう…」
電話を切った後、冷静になってから、言いようのない不安に襲われていることでしょう。でも、どうか落ち着いてください。 あなたが遭遇したのは、サポート詐Gと呼ばれる巧妙な手口です。そして、今この瞬間から正しい対処をすれば、被害を最小限に食い止めることができます。
この記事では、パソコンの偽警告で電話してしまったあなたのために、今すぐやるべき具体的な対処法を、状況別に徹底解説します。遠隔操作ソフトをインストールしてしまった場合の対処法から、パソコンの初期化、そして二度と騙されないための予防策まで、あなたの不安を解消するための情報をすべて網羅しました。
この記事を最後まで読めば、あなたは冷静さを取り戻し、次に何をすべきかが明確にわかります。さあ、一緒に問題を解決していきましょう。
まず知ってほしい!そのパソコン警告音は偽物です
電話をしてしまった後で、まず最も知っていただきたいこと。それは、あなたが見た警告画面や聞いた警告音は、ほぼ100%偽物だということです。これは「サポート詐欺」と呼ばれる手口で、あなたのパソコンはウイルスに感染していません。
犯人たちの目的は、偽の警告であなたをパニックに陥らせ、偽のサポートセンターに電話をかけさせ、高額なサポート料金をだまし取ることです。まずは、この事実を理解し、冷静さを取り戻すことが何よりも重要です。
サポート詐欺の巧妙な手口とは?
サポート詐欺は、年々手口が巧妙化しており、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)への相談件数も過去最高を記録するなど、多くの人が被害に遭っています。犯人グループは、以下のような流れであなたを罠にかけます。
- ウェブサイトに罠を仕掛ける:普段見ているニュースサイトやブログ、検索結果の上位に表示される広告などに、罠が仕掛けられています。
- 偽の警告画面を表示させる:広告などをクリックすると、突然「ウイルスに感染した」という画面が表示され、大音量の警告音が鳴り響きます。マイクロソフトなど実在する企業のロゴを悪用し、本物であるかのように見せかけます。
- 電話をかけさせる:画面には「今すぐサポートに電話してください」と電話番号が表示されます。警告音や消せない画面で焦らせ、正常な判断ができない状態にして電話をかけさせようとします。
- 遠隔操作で信頼させる:電話をすると、片言の日本語を話すオペレーターが「マイクロソフトの技術者」などと名乗り、パソコンを直すために必要だと言って遠隔操作ソフトをインストールさせます。そして、無意味なコマンド操作を見せつけ、「あなたのPCは危険な状態だ」と信じ込ませます。
- 高額な金銭を要求する:最後に「ウイルスを除去し、今後もPCを守るために」と、数万円から数十万円のサポート契約を迫ります。支払方法はコンビニで買えるプリペイドカード(ギフトカード)を指定されるケースがほとんどです。

なぜ偽の警告画面が表示されてしまうのか?
「怪しいサイトなんて見ていないのに…」と思うかもしれません。しかし、サポート詐欺の罠は、ごく普通のウェブサイトに潜んでいます。
- ウェブサイト上の広告:ニュースサイトやまとめサイト、個人のブログなど、あらゆるサイトに表示される広告が悪用されます。広告の仕組みを悪用しているため、サイト運営者も気づかないうちに詐欺広告が掲載されてしまうのです。
- 検索結果の広告:GoogleやYahoo!などで検索した際、検索結果の一番上に表示される「広告」枠。ここに詐欺サイトへのリンクが表示されることもあります。大手通販サイトの名前を騙っていることもあるため、非常に悪質です。
つまり、インターネットを使っていれば、誰にでも偽の警告画面に遭遇する可能性があるのです。あなたに落ち度があったわけではないので、自分を責める必要は全くありません。
パソコン警告音で電話してしまった!今すぐやるべき初期対応
電話をしてしまった事実に気づいたら、パニックにならず、今からお伝えする手順を一つずつ実行してください。行動が早いほど、被害を未然に防いだり、拡大を止めたりすることができます。
【最優先】すぐにネットワークから切断する
もし、オペレーターの指示に従ってパソコンを操作している最中なら、今すぐインターネット接続を切断してください。これにより、相手からの遠隔操作を強制的に中断させ、さらなる被害を防ぐことができます。
- 無線LAN(Wi-Fi)の場合:パソコンのWi-Fi機能をオフにします。機内モードにするのが一番手っ取り早い方法です。
- 有線LANの場合:パソコンに接続されているLANケーブルを物理的に引き抜いてください。
電話で伝えてしまった情報を冷静に整理する
次に、電話で相手に何を伝えてしまったか、何をしてしまったかを冷静に思い出して書き出してみましょう。整理することで、次に取るべき行動が明確になります。
- 氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの個人情報
- クレジットカードの番号、有効期限、セキュリティコード
- ネットバンキングのID、パスワード、口座情報
- 各種サービスのログインID、パスワード
- 言われるがままにインストールしたソフトの名前
- プリペイドカード(ギフトカード)のコード番号を伝えたか
【状況別】具体的な対処法
伝えてしまった情報によって、対処法が異なります。ご自身の状況に合わせて、急いで対応を進めてください。
クレジットカード情報を伝えた場合
一刻も早く、クレジットカード会社の不正利用担当窓口に電話してください。カードの裏面に記載されている電話番号に連絡し、「サポート詐欺の被害に遭い、カード情報を伝えてしまった」と正直に話しましょう。
カード会社がすぐにカードの利用を停止し、不正利用されていないか調査してくれます。もし不正利用されていた場合でも、カード会社の補償を受けられる可能性が高いです。とにかく、スピードが命です。
プリペイドカードで支払ってしまった場合
コンビニなどで購入したプリペイドカード(Appleギフトカード、Google Playギフトカードなど)のコードを伝えてしまった場合、残念ながらお金を取り戻すのは非常に困難です。犯人たちはコードを受け取るとすぐに換金してしまうからです。
しかし、諦めずに発行元の事業者に連絡し、事情を説明してコードの利用停止を依頼してみましょう。タイミングによっては、利用を差し止められる可能性がゼロではありません。また、必ず警察に被害届を提出してください。
ネットバンキングを操作された・ログイン情報を伝えた場合
これは非常に危険な状態です。今すぐ、利用している銀行の緊急連絡先に電話してください。不正送金が行われていないか確認し、すぐに口座の取引を停止してもらいましょう。
オペレーターに遠隔操作され、気づかないうちに送金額を書き換えられて高額な不正送金をされたという事例も報告されています。取引履歴を必ず確認し、身に覚えのない出金があれば、すぐに銀行と警察に相談してください。

パソコンにソフトをインストールしてしまった場合の対処法
オペレーターの指示で何らかのソフトをインストールしてしまった場合、それは遠隔操作ソフトである可能性が極めて高いです。ネットワークを切断していても、パソコン内にソフトが残っている限り安心はできません。速やかにアンインストール(削除)しましょう。
悪用される主な遠隔操作ソフト
犯人グループが悪用するのは、本来は正当な目的で使われる、市販の遠隔操作ソフトです。以下のような名前のソフトをインストールしていないか確認してください。
- AnyDesk
- TeamViewer
- LogMeIn Rescue
- UltraViewer
これらは一部の例であり、他のソフトが悪用される可能性もあります。
遠隔操作ソフトをアンインストールする方法(Windows11)
ここではWindows11を例に、アプリのアンインストール手順を解説します。
- 「設定」を開く:スタートボタンを右クリックし、メニューから「設定」を選択します。
- 「アプリ」を選択:左側のメニューから「アプリ」をクリックし、次に「インストールされているアプリ」を選択します。
- 該当アプリを探す:インストールされているアプリの一覧が表示されるので、犯人に指示されてインストールしたソフトを探します。
- アンインストールを実行:該当ソフトの右側にある「…」をクリックし、「アンインストール」を選択します。確認画面が表示されたら、再度「アンインストール」をクリックします。
これでアンインストールは完了です。ただし、これだけで安心するのはまだ早いです。
【重要】アンインストールだけでは不十分な理由
なぜなら、アンインストールしても、パソコンの設定を変更されていたり、他の不審なファイルを仕掛けられていたりする可能性を完全に否定できないからです。相手はあなたのパソコンを自由に操作できたわけですから、どんな悪意のある仕掛けを残していったかわかりません。
そのため、より安全な状態に戻すために、IPAなどの専門機関は「システムの復元」または「初期化」を強く推奨しています。
パソコンが遠隔操作された!最も安全な対処法とは
遠隔操作されてしまった事実は、非常に怖いことですよね。自分のパソコンが、見知らぬ他人に覗かれ、勝手に操作されたのですから。情報漏洩のリスクも考えられます。ここでは、遠隔操作されたパソコンを安全な状態に戻すための対処法を解説します。
選択肢1:システムの復元(推奨)
「システムの復元」とは、パソコンの設定やシステムファイルを、問題が発生する前の特定の日時(復元ポイント)の状態に戻す機能です。これにより、遠隔操作ソフトをインストールしたり、設定を変更されたりする前の状態にパソコンを戻すことができます。
メリット:
- 作成した文書ファイルや写真などの個人データは消えない。
- 初期化(リカバリー)よりも手軽に実行できる。
デメリット:
- 復元ポイント以降にインストールしたアプリやドライバーは削除される。
- 復元ポイントが作成されていないと利用できない。
「システムの復元」の実行手順(Windows11)
- コントロールパネルを開き、「回復」をクリックします。
- 「システムの復元を開く」を選択します。
- 「推奨される復元」または「別の復元ポイントを選択する」を選び、「次へ」をクリックします。
- カレンダーなどから、詐欺の電話をする前の日時の復元ポイントを選択します。
- 内容を確認し、「完了」をクリックすると、システムの復元が開始されます。
詳しい手順については、IPAが公開している手順書や、お使いのパソコンメーカーの公式サイトも参考にしてください。
選択肢2:パソコンの初期化(最終手段)
システムの復元がうまくいかない場合や、より確実にパソコンをクリーンな状態にしたい場合は、「初期化(リカバリー)」が最も安全な方法です。これは、パソコンを工場出荷時の状態に戻す操作です。
この対処法の詳細は、次の章で詳しく解説します。

パソコンが遠隔操作されたら初期化しかないのか?
「初期化」と聞くと、データが全部消えてしまうイメージがあり、ためらってしまいますよね。遠隔操作されたパソコンは、必ず初期化しないといけないのでしょうか?ここでは、初期化の必要性と、実行する際の注意点について詳しく解説します。
なぜ初期化が最も安全な対処法なのか?
結論から言うと、初期化は、遠隔操作されたパソコンを元に戻す最も確実で安全な方法です。
システムの復元でも多くの場合は問題ありませんが、犯人が非常に高度な技術を持っている場合、システムの復元では除去できない悪質なプログラムを仕込んでいる可能性もゼロとは言い切れません。初期化は、そうした見えない脅威も含めて、パソコンの内部を完全に一掃してくれるからです。
特に、以下のようなケースでは初期化を強く推奨します。
- システムの復元がうまくいかなかった、または復元ポイントがなかった場合
- パソコンの動作が明らかにおかしい、不審なファイルがある場合
- とにかく少しでも不安をなくし、安心してパソコンを使いたい場合
【重要】初期化の前に必ずやるべきデータバックアップ
初期化を行うと、パソコンに保存されている写真、動画、作成した文書、音楽ファイルなど、すべてのデータが消えてしまいます。そのため、初期化を実行する前に、必ず必要なデータのバックアップを取ってください。
バックアップ先:
- 外付けHDDやSSD
- USBメモリ
- クラウドストレージ(Google Drive, OneDrive, Dropboxなど)
バックアップを取る際は、システムファイルなどは含めず、自分の作成したファイルのみをコピーするように注意しましょう。
Windowsの初期化(リカバリー)手順
Windows10やWindows11には、比較的簡単にパソコンを初期状態に戻す機能が備わっています。
- 「設定」→「システム」→「回復」の順に選択します。
- 「このPCをリセット」の項目にある「PCをリセットする」ボタンをクリックします。
- オプションの選択画面で「すべてを削除する」を選択します。(※「個人用ファイルを保持する」では、悪意のあるプログラムが残る可能性があるため推奨されません)
- 画面の指示に従って進めていくと、初期化が開始されます。
初期化の方法はパソコンメーカーによって異なる場合があるため、詳細は取扱説明書やメーカーのサポートサイトで確認してください。
そもそも偽のパソコンウイルス感染警告の消し方とは?
ここまで電話してしまった後の対処法を解説してきましたが、そもそも偽のウイルス感染警告が表示された時点で、慌てずに対処できれば被害は発生しません。ここでは、偽警告画面の正しい消し方を解説します。いざという時のために、ぜひ覚えておいてください。

方法1:キーボードショートカットでブラウザを閉じる
偽の警告画面は、ウェブブラウザ(Edge, Chrome, Firefoxなど)の全画面表示機能などを悪用して、閉じられないように見せかけているだけです。画面上の「×」ボタンは偽物なのでクリックしてはいけません。
まずは、以下のキーボードショートカットを試してみてください。
- 【Alt】+【F4】キーを同時に押す:アクティブなウィンドウを閉じるショートカットです。これでブラウザごと閉じられることが多いです。
- 【Ctrl】+【W】キーを同時に押す:現在開いているタブを閉じるショートカットです。
方法2:タスクマネージャーから強制終了する
ショートカットキーでも閉じられない場合は、タスクマネージャーを使ってブラウザを強制的に終了させます。
- 【Ctrl】+【Shift】+【Esc】キーを同時に押して、タスクマネージャーを起動します。
- 「プロセス」タブの中から、お使いのブラウザ(Microsoft Edge, Google Chromeなど)を探します。
- ブラウザ名を選択した状態で、右下の「タスクの終了」ボタンをクリックします。
これにより、警告画面ごとブラウザを強制的に閉じることができます。
方法3:パソコンを再起動する
何をしても画面が消えない場合の最終手段は、パソコンの再起動です。
【Ctrl】+【Alt】+【Delete】キーを同時に押し、表示された画面の右下にある電源マークをクリックして「再起動」を選択します。これでパソコンが再起動され、偽の警告画面は消えます。
重要なのは、警告音や警告メッセージに決して惑わされず、画面に表示された電話番号には絶対に電話をしないこと。 これさえ守れば、サポート詐欺の被害に遭うことはありません。
パソコンの警告音とサポート詐欺に関するQ&A
ここでは、読者の皆様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
回答:電話番号を相手に知られただけなら、過度に心配する必要はありません。 遠隔操作ソフトをインストールしたり、個人情報やカード情報を伝えたりしていなければ、直接的な被害が発生する可能性は低いです。今後、不審な電話がかかってくる可能性はありますが、その際は無視するか、着信拒否設定をしてください。
回答:遠隔操作をされた場合、情報が漏洩した可能性は否定できません。 犯人がパソコン内をどの程度見たかによりますが、デスクトップに保存していたファイルや、ブラウザに保存していたパスワードなどが盗まれたリスクはあります。念のため、各種サービスのパスワードは変更しておくことを強くお勧めします。特に、ネットバンキングやオンラインショッピングサイトのパスワードは最優先で変更してください。
回答:残念ながら、プリペイドカードで支払ってしまったお金を取り戻すのは極めて困難です。また、サポート詐欺はそもそも詐欺行為であり、正当な契約ではないため、クーリングオフの対象にはなりません。 お金を取り戻すことよりも、二次被害を防ぐための対処(カード停止、警察への相談など)を優先してください。
回答:金銭的な被害が発生した場合や、不正送金された場合などは、必ず警察に相談し、被害届を提出してください。 被害届を出すことで、銀行の補償手続きなどがスムーズに進む場合があります。最寄りの警察署、またはサイバー犯罪相談窓口(電話番号:#9110)に連絡しましょう。
【まとめ】冷静な対処と事前の対策でパソコンを守ろう
今回は、パソコンの偽警告音で慌てて電話してしまった場合の具体的な対処法について、詳しく解説しました。
突然のトラブルで、本当に不安な気持ちになったことと思います。しかし、この記事で紹介した手順を一つずつ実行すれば、必ず問題を解決できます。
最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 偽警告に電話してしまったら:すぐにネットワークを切断し、伝えた情報に応じてカード会社や銀行に連絡する。
- 遠隔操作ソフトをインストールしたら:ソフトをアンインストールし、安全のために「システムの復元」または「初期化」を行う。
- 金銭被害に遭ってしまったら:一人で悩まず、すぐに警察や消費生活センターに相談する。
- 今後の対策として:警告画面の電話番号には絶対に電話しない。「警告画面+電話番号=詐欺」と心得る。
今回の経験は、決して無駄ではありません。この経験を教訓に、信頼できるセキュリティソフトを導入するなど、パソコンの守りを固めていきましょう。正しい知識こそが、あなたの大切な財産や情報を守る最強の盾となります。
もうあなたは大丈夫です。安心して、安全なデジタルライフを取り戻してくださいね。