「家電リサイクル料金の勘定科目は、租税公課?それとも支払手数料?」
「リサイクル券の消費税は非課税だと聞いたけど、運搬費はどうなるの?」
経理処理で迷うのが、たまにしか発生しない家電の処分費用です。
実は、家電リサイクル料金は「リサイクル料」と「収集運搬料」で消費税の扱いが明確に異なります。ここを間違えると、決算やインボイス処理にミスが生じてしまいます。
この記事では、家電リサイクル券(料金)の正しい勘定科目3選と、間違いやすい消費税区分、ケース別の仕訳を網羅的に解説します。個人事業主の家事按分もカバーしています。
この記事を読めば、複雑なリサイクル料金の処理を一発で理解でき、自信を持って会計ソフトに入力できるようになります。
※2025年12月23日 記事の内容を最新の情報に更新しました。
家電リサイクル料金の勘定科目・消費税の正解早見表
まずは結論です。実務で迷わないよう、処理方法を以下の表にまとめました。
会計ソフト入力時は、この表の通りに設定すれば問題ありません。
| 費用の内訳 | 推奨される勘定科目 | 消費税区分 (ここが最重要!) |
|---|---|---|
| ①リサイクル料金 (メーカーへの再商品化費用) |
支払手数料 雑費 租税公課 ※どれを選んでもOK (継続性の原則を守る) |
不課税 (税金がかからない) |
| ②収集運搬料金 (業者・販売店への運搬費) |
課税仕入 (税金がかかる) |

推奨される3つの勘定科目と選び方の基準
家電リサイクル料金の勘定科目に、法的な「唯一の正解」はありません。
一般的には以下の3つのいずれかが使われます。自社のルールに合わせて選択してください。
1. 支払手数料(最もおすすめ)
リサイクル料金を「廃棄処分のための手数料」として処理する方法です。
- メリット:収集運搬料(業者への対価)の性質と合致しており、違和感が少ないです。
- こんな会社におすすめ:経理処理を実態に合わせて正確に行いたい場合。
2. 雑費
金額が小さく、重要性が低い費用として処理する方法です。
- メリット:科目を考えずに済み、処理が簡単です。
- こんな会社におすすめ:家電の廃棄が数年に一度しかなく、勘定科目を増やしたくない場合。
3. 租税公課
家電リサイクル法という「法律に基づく義務」として処理する方法です。
- メリット:公的な負担金としての意味合いを強調できます。
- 注意点:収集運搬料(民間業者への対価)まで租税公課に含めることに、厳密には違和感があるという見方もあります。
消費税は「不課税」と「課税」が混在する
ここが本記事の最重要ポイントです。
検索で「家電リサイクル券 非課税」と調べる方が多いですが、正しくは「不課税(ふかぜい)」と「課税」の組み合わせになります。
なぜリサイクル料金は「不課税」なのか?
リサイクル料金は、メーカーが特定家庭用機器再商品化法に基づきリサイクルを行うための費用です。
これは「資産の譲渡等の対価」ではなく、法律で定められた負担金であるため、消費税の対象外(不課税)となります。
なぜ収集運搬料金は「課税」なのか?
こちらはシンプルです。電気屋さんや業者が「指定場所まで運ぶ」というサービス(役務提供)を行っているため、通常の取引と同じく消費税がかかります。
インボイス制度への対応について
インボイス制度開始後は、以下の点に注意してください。
- 収集運搬料金(課税):仕入税額控除を受けるため、業者が発行する適格請求書(インボイス)の保存が必要です。
- リサイクル料金(不課税):消費税がかからない取引なので、インボイスの保存義務はありません。
ケース別仕訳例(借方・貸方)
それでは、実務で頻出する3つのパターンについて、具体的な仕訳を見ていきましょう。
※ここでは汎用性の高い「支払手数料」を使った例を紹介します。
ケース1:エアコンや洗濯機を廃棄のみした場合
事業で使用していたエアコンを廃棄し、リサイクル料金(990円)と収集運搬料(1,650円)を現金で支払ったケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 支払手数料 (対象外/不課税) |
990 | 現金 | 2,640 | エアコン リサイクル料 |
| 支払手数料 (課税仕入) |
1,650 | エアコン 収集運搬料 |
ケース2:買い替え(購入時)に支払った場合
20万円の冷蔵庫を購入し、古い冷蔵庫の処分費用(6,000円)も合わせて振り込んだケース。
新しい冷蔵庫は「備品」などの資産科目にしますが、リサイクル費用は資産に含めず、その期の経費(支払手数料など)とします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品 | 200,000 | 普通預金 | 206,000 |
| 支払手数料 | 6,000 |
ケース3:固定資産除却損に含める場合(上級編)
帳簿価額が残っている固定資産を廃棄する場合、残存価格を「固定資産除却損」(特別損失)として計上します。
この際、リサイクル料金等の諸経費もまとめて「固定資産除却損」に含めて処理することが可能です。
こうすることで、その資産の廃棄にかかったコスト全体を把握しやすくなります。

個人事業主は「家事按分」が必要
個人事業主の方が、自宅兼事務所で使っていたテレビや冷蔵庫などを処分する場合は、「事業で使っていた割合(事業供用割合)」の分だけを経費にします。
例:処分費用合計 5,000円、事業使用率 40% の場合
- 経費になる金額(租税公課や雑費):2,000円(5,000円 × 40%)
- 経費にならない金額(事業主貸):3,000円(5,000円 × 60%)
プライベートでの使用分まで経費に入れてしまうと、税務調査で指摘されるリスクがありますので注意しましょう。
家電リサイクル券の「排出者控」はいつまで保管?
支払いの証明となる「家電リサイクル券(排出者控)」は、領収書と同様に証憑書類(しょうひょうしょるい)として扱われます。
法律で定められた以下の期間、必ず保管してください。
- 法人の場合:原則 7年間(欠損金の繰越控除を受ける場合は10年)
- 個人事業主の場合:原則 5年間(青色申告・白色申告問わず)
万が一紛失してしまったら?
リサイクル券の再発行はできませんが、正しくリサイクルされたかどうかは、家電製品協会のサイトで管理票番号などから照会可能です。
処分状況の確認や、最新のリサイクル料金はこちらから確認できます。
よくある質問(Q&A)
「租税公課」と「支払手数料」を間違えた程度であれば、税額に影響しないため、そのままでも大きな問題になることは少ないです。ただし、消費税区分(課税・不課税)の間違いは納税額に関わるため、気づいた時点で振替仕訳などで修正することをおすすめします。
貸方を「現金」ではなく「未払金」として処理し、引き落とし時に「未払金」を消し込みます。リサイクル券の控えと、カードの利用明細の両方を保存しておきましょう。
まとめ
家電リサイクル料金の会計処理について解説しました。
最後に重要なポイントを再確認しましょう。
- 勘定科目は「支払手数料」「雑費」「租税公課」のいずれかで統一する。
- 消費税はリサイクル料(不課税)と収集運搬料(課税)に分けて入力する。
- 個人事業主は家事按分を忘れずに行う。
- リサイクル券の控えは5〜7年間大切に保管する。
家電の処分は頻繁にあることではありませんが、だからこそ正しい知識を持っておくことで、いざという時にスムーズに対応できます。
この記事をブックマークして、次回の処分の際にもぜひ役立ててくださいね。

