「新築の見た目をキレイにしたい」「配管が邪魔」という理由で、エアコンの隠蔽配管を検討していませんか?
エアコンの隠蔽配管は、壁や天井裏に配管を通すため、室内も室外もスッキリ仕上がる魅力的な方法です。しかし、そのメリットの裏には、費用やメンテナンス性に関する大きなデメリットも潜んでいます。
この記事では、エアコンの隠蔽配管で後悔しないために知っておくべき具体的なデメリット、費用相場、トラブル対処法、そして失敗しない業者の選び方まで、7つの注意点を中心に徹底解説します。隠蔽配管を決定する前に、ぜひご一読ください。
エアコンの隠蔽配管とは?仕組みと露出配管との違い
まずは基本から押さえましょう。エアコンの隠蔽配管とは、具体的にどのような工事を指すのでしょうか。一般的な「露出配管」との違いを知ることが、メリット・デメリットを理解する第一歩です。
隠蔽配管の仕組み
隠蔽配管とは、エアコンの室内機と室外機をつなぐ以下の3つの管(または電線)を、壁の中や天井裏、床下などに隠して設置する工法です。
- 冷媒配管: 冷媒ガスが通る2本の銅管
- ドレンホース: 冷房時に発生する結露水を屋外に排出する排水管
- 連絡電線: 室内機と室外機を連動させるための電線
新築時や大規模リフォームの際に、壁や天井のボードを張る前に配管を仕込んでおく「先行配管」と呼ばれる方法が一般的です。
露出配管(通常)との比較
隠蔽配管と露出配管の最大の違いは、その名の通り「配管が見えるか見えないか」です。以下の表で主な違いを比較してみましょう。
| 比較項目 | 隠蔽配管 | 露出配管(標準工事) |
|---|---|---|
| 見た目 | 非常にスッキリする(配管が隠れる) | 配管が露出する(化粧カバーで保護可) |
| 初期費用 | 高い(追加費用が発生) | 安い(標準工事費に含まれる) |
| 工事の難易度 | 高い(専門技術が必要) | 比較的容易 |
| メンテナンス性 | 困難(壁内のため) | 容易(配管が外にあるため) |
| エアコン交換 | 困難・費用が高い | 比較的容易 |
| トラブル発見 | 遅れやすい(水漏れ・ガス漏れ) | 気づきやすい |
自宅は隠蔽配管?簡単な見分け方
「うちのエアコン、これって隠蔽配管なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。中古物件を購入した場合や、設置時のことを覚えていない場合、簡単な見分け方をご紹介します。
室内機の周りを確認する
室内機のすぐ近く(通常は横か下)に、壁に穴が開いていて配管が屋外に出ているのが見えますか? もし配管穴が見当たらず、配管が壁の中に消えているようであれば、隠蔽配管の可能性が非常に高いです。
室外機の配管接続部を見る
室外機につながっている配管が、外壁の高い位置や、室内機とは全く異なる方向の壁から出てきている場合、壁や天井裏を通っている隠蔽配管だと判断できます。露出配管は、基本的に室内機のすぐ裏手の壁から出てきます。
図面(設計図書)を確認する
新築や購入時の設計図書(設備図面)が手元にあれば、エアコンの配管ルートが記載されています。「隠蔽配管」や「先行配管」といった記述がないか確認するのが最も確実です。
後悔する前に知りたい!隠蔽配管の5つの大きなデメリット
見た目がスッキリする隠蔽配管ですが、安易に決めると「こんなはずではなかった」と後悔するケースも少なくありません。契約前に必ず確認すべき5つのデメリットを解説します。
1. 取り付け・交換・修理費用が高額になる
隠蔽配管は、露出配管に比べて工事の手間がかかるため、初期費用(取り付け費用)が高くなります。
さらに深刻なのは、故障時やエアコン交換(買い替え)時です。配管が壁の中にあるため、状態の確認や修理が難しく、作業費が高額になりがちです。最悪の場合、壁や天井を一部壊して作業する必要があり、その復旧費用も別途発生します。
2. 故障時の修理や点検が困難
隠蔽配管の最大の弱点がメンテナンス性です。特に以下のようなトラブルが発生した場合、原因特定と修理が非常に困難になります。
- ドレンホースの詰まりによる水漏れ
- 冷媒ガスの漏れ
露出配管であればすぐに目視で確認・修理できる箇所でも、隠蔽配管では壁内のため発見が遅れます。気づいた時には壁内部が水浸しになり、カビの発生や建材の腐食につながるリスクもあります。
3. 対応できる業者が限られる
隠蔽配管の工事は、専門的な知識と高い技術力、そして経験が必要です。そのため、家電量販店や一部の工事業者では対応を断られるケースが少なくありません。
特にエアコンの交換(入れ替え)時には、「配管洗浄」や既存配管の状態チェックが必須となるため、対応できる業者がさらに限られます。「どこに頼めばいいかわからない」という事態に陥る可能性があります。
4. エアコンの機種が制限される場合がある
隠蔽配管にすると、将来選べるエアコンの機種が制限されることがあります。特に注意が必要なのは、以下の機能を持つエアコンです。
- 加湿機能付きエアコン(例:ダイキン「うるさら」シリーズ)
- 換気機能付きエアコン
- フィルター自動お掃除機能(屋外排出タイプ)
これらの機種は、通常の配管(冷媒管・ドレン管)以外に、加湿ホースや換気ホースなどが必要になります。新築時にそれらの配管も一緒に隠蔽しておかない限り、後から設置することはほぼ不可能です。

5. 配管の劣化やトラブルに気づきにくい
露出配管であれば、紫外線の影響などで配管カバーが劣化したり、テープがボロボロになったりするのを「見て」交換時期を判断できます。
しかし、隠蔽配管は壁の中にあるため、配管自体の経年劣化や、施工時のわずかなミス(ドレンの勾配不良など)に気づくことができません。トラブルが表面化(水漏れ・効かない)した時には、すでに深刻な状態になっていることが多いのです。
デメリットだけじゃない!隠蔽配管の4つのメリット
多くのデメリットがある一方、隠蔽配管にはそれを上回るほどの強力なメリットも存在します。これらがご自身のニーズと合致するか確認しましょう。
1. 見た目がスッキリし外観・内観が美しくなる
これが隠蔽配管を選ぶ最大の理由です。
室内側はエアコン本体だけになり、配管穴や配管カバー(化粧カバー)が一切見えません。室外側も、配管が壁からいきなり出ているように見えるため、家の外観を損ねません。デザイナーズ住宅や、内装・外観に徹底的にこだわりたい方にとっては、非常に大きなメリットとなります。
2. 配管の劣化(紫外線など)を防ぎやすい
配管が壁内に保護されるため、露出配管のように紫外線や雨風にさらされることがありません。これにより、配管や保温材の劣化スピードが遅くなり、配管自体の寿命が長くなる傾向があります。
3. 設置場所の自由度が高い
露出配管の場合、室内機と室外機は「壁の同じ面」や「最短距離」で設置するのが基本です。
隠蔽配管であれば、壁や天井裏を通して配管を自由にレイアウトできるため、室外機から遠く離れた部屋の壁(例えば、家の中心にある廊下に面した壁など)にも室内機を設置できます。
4. 室外機の置き場所を選べる
3の理由とも関連しますが、室内機の位置に縛られず、室外機を建物の裏手や人目につかない場所にまとめて設置することが可能です。これにより、家の正面やベランダをスッキリと見せることができます。
エアコンの隠蔽配管の取り付け・交換費用相場
隠蔽配管の費用は、状況によって大きく変動します。あくまで目安ですが、一般的な露出配管(標準工事)に比べてどれくらい高くなるのかを知っておきましょう。
新築時の隠蔽配管(先行配管)
ハウスメーカーや工務店によって異なりますが、通常のエアコン標準工事費(約15,000円〜)に対し、1箇所あたり約10,000円〜30,000円程度の追加オプション費用がかかるのが一般的です。
既存住宅へのリフォーム費用
すでに壁や天井が仕上がっている既存住宅に隠蔽配管を施すのは、非常に高額になります。 壁や天井を一度解体し、配管を通した後に復旧する作業が必要になるため、数十万円単位の費用がかかることも珍しくありません。大掛かりなリノベーションのタイミング以外では現実的ではないでしょう。
エアコン交換時の費用(配管再利用)
既存の隠蔽配管を再利用してエアコンを交換する場合、以下の作業が追加で必要になるため、費用が高額になります。
- 既存配管の内部洗浄(必須)
- 配管の接続(溶接など特殊技術が必要な場合あり)
- ドレンの通水確認・洗浄
配管洗浄だけでも数万円かかることがあり、総額で50,000円〜80,000円程度、あるいはそれ以上かかるケースも珍しくありません。
配管ごと交換する場合
既存の配管が劣化や詰まりで再利用できない場合、壁や天井を開けて配管を入れ替えるか、隠蔽配管を諦めて「露出配管」で穴を開け直すことになります。壁の開口・復旧作業が伴う場合、費用は10万円以上になる可能性も覚悟しましょう。
隠蔽配管の工事(取り付け・交換)の流れ
隠蔽配管の工事はどのように進むのでしょうか。新築時と交換時では流れが大きく異なります。
新築・リフォーム時の取り付け(先行配管)
- 設計・打ち合わせ: ハウスメーカーや設計士と、エアコンの機種、設置場所、配管ルートを決定する
- 先行配管工事: 建築途中の壁や天井ができる前に、配管(冷媒管・ドレン管・電線)を仕込む
- 壁・天井施工: 内装業者が壁や天井のボードを張る
- エアコン本体設置: 建物完成後、配管にエアコンの室内機・室外機を接続する
エアコン交換時の流れ(配管再利用)
- 業者選定・見積もり: 隠蔽配管の交換実績が豊富な専門業者を探し、現地調査を依頼する
- 既存エアコンの取り外し: ポンプダウン(ガス回収)を行い、古いエアコンを取り外す
- 配管洗浄: 専用の機材で既存配管の内部を徹底的に洗浄する
- ドレン確認: ドレンホースに詰まりがないか、水漏れリスクがないかを通水テストする
- 新エアコンの設置: 新しいエアコンを配管に接続し、真空引き・ガス充填を行う
- 試運転・確認: 正常に動作するか、水漏れがないかを確認して完了
隠蔽配管のトラブルと対処法
隠蔽配管で最も恐ろしいのがトラブルの発生です。特に多い「水漏れ」と「ガス漏れ」について、原因と対処法を知っておきましょう。
最も多い水漏れの原因
エアコンからの水漏れは、ほぼドレンホースのトラブルが原因です。隠蔽配管の場合、以下の問題が起こりやすいです。
- ドレンホースの詰まり: 長年のホコリやスライム(雑菌の塊)が溜まり、水が逆流する
- 施工不良(勾配不足): 新築時の施工ミスで、ドレンホースの勾配(傾き)が正しく取れておらず、水が流れにくい
- 配管の損傷: 壁内で配管が折れたり、小動物にかじられたりして穴が開く
エアコンが効かない(ガス漏れ)
「冷房も暖房も効きが悪い」という場合、冷媒ガスが漏れている可能性があります。隠蔽配管は配管の接続箇所が壁内にある場合もあり、どこで漏れているかの特定が非常に困難です。修理には壁の開口が必要になることもあります。
トラブル発生時の連絡先
水漏れや不調に気づいたら、すぐにエアコンの使用を中止し、電源プラグを抜いてください。その後、設置を依頼した業者、または隠蔽配管の修理に対応できる専門業者に点検を依頼しましょう。
隠蔽配管のメンテナンスと配管洗浄
隠蔽配管を長持ちさせるには、メンテナンスが不可欠です。特に「配管洗浄」の重要性を理解しておきましょう。

配管洗浄はなぜ必要か
エアコン交換時に既存の配管を再利用する場合、配管洗浄は必須の作業です。
古いエアコンの内部には、コンプレッサーオイルの劣化による汚れや水分、金属粉などが残っています。これを洗浄せずに新しいエアコンを接続すると、ゴミが新しいエアコン内部に入り込み、すぐに故障する原因となります。(参照:ダイキン工業株式会社など空調メーカー各社)
自分でできるドレンホースの詰まり予防
業者による洗浄は高額ですが、ドレンホースの詰まり予防であれば自分でもできることがあります。室外機の近くにあるドレンホースの出口に、市販の「ドレンキャップ(防虫キャップ)」を取り付けるのが効果的です。
これにより、虫やゴミがホースの先端から侵入するのを防ぎ、詰まりのリスクを大幅に減らすことができます。
隠蔽配管で失敗しない業者の選び方:4つのポイント
隠蔽配管の成否は「業者選び」で決まると言っても過言ではありません。家電量販店やネットの格安業者ではなく、以下のポイントで信頼できる専門業者を探しましょう。
1. 隠蔽配管の豊富な実績があるか
まずは、公式サイトの施工事例などで「隠蔽配管」の工事実績が豊富にあるかを確認しましょう。特に、技術力の指標として「業務用エアコン」の施工実績がある業者は信頼度が高い傾向にあります。業務用エアコンは隠蔽配管が多いため、ノウハウが蓄積されているからです。
2. 見積もりが明確で「総額」が提示されるか
「隠蔽配管工事 一式」といった曖昧な見積もりを出す業者は危険です。「配管洗浄費」「配管延長費」「ドレン勾配調整費」など、作業内容ごとに費用が明記されているかを確認しましょう。必ず「追加費用が発生しないか」を書面で確認することが重要です。
3. 配管洗浄の専用機材と技術があるか
エアコン交換の際、古い配管を再利用できるかどうかの判断は、適切な洗浄技術があってこそです。どのような機材(窒素ブロー、専用洗浄剤など)を使って、どのように洗浄するのかを具体的に説明できる業者を選びましょう。
4. 保証やアフターフォローが充実しているか
工事後のトラブル(水漏れ・ガス漏れ)は、隠蔽配管にとって致命的です。「工事保証」が何年付くのかを確認することはもちろん、施工不良による水漏れで壁や床に損害が出た場合の「損害賠償保険」に加入している業者であれば、より安心です。
隠蔽配管が向いている人・向いていない人
ここまで解説したメリット・デメリットを踏まえ、ご自身が隠蔽配管に向いているかチェックしてみましょう。
メリットが勝る(向いている)ケース
- 新築時で、家のデザインや外観に徹底的にこだわりたい
- 建築士やハウスメーカーと入念な打ち合わせができる
- 将来のメンテナンスや交換費用が高額になることを許容できる
- 室外機を人目につかない場所にまとめたい
リスクが高い(向いていない)ケース
- 初期費用や将来のメンテナンス費用をできるだけ抑えたい
- 将来、加湿・換気機能付きの高機能エアコンに買い替えたい
- トラブルが起きた時にすぐ対応・修理できないと不安
- 既存住宅で、大掛かりなリフォームの予定はない
よくある質問(Q&A)
最後に、隠蔽配管に関して多くの方が抱く疑問にお答えします。
A. 適切に施工されていれば、配管(銅管)自体の耐用年数は長く、20年~30年程度持つと言われています。しかし、これは設置環境や施工品質によります。エアコン本体の寿命(約10年~15年)よりはるかに長いため、通常はエアコンを1〜2回交換する間は配管を再利用します。
A. 絶対にできません。 エアコンの取り付けには「第二種電気工事士」の資格が必要な作業が含まれるほか、冷媒ガスの取り扱い(フロンガス)にも専門知識と工具が必要です。隠蔽配管は特に難易度が高く、施工不良は重大な事故(火災、水漏れ、感電)につながるため、必ず専門業者に依頼してください。
A. 店舗や提携業者によりますが、隠蔽配管の交換は断られるか、非常に高額な見積もりになるケースが多いです。量販店の工事は「標準的な露出配管」を前提としていることが多いため、隠蔽配管のような特殊工事は専門外となることがあります。隠蔽配管専門の空調設備業者に直接依頼するのが確実です。
A. 水を自然に流すため、ドレンホースには必ず下り勾配が必要です。国土交通省の「公共建築工事標準仕様書」などでは、「1/100以上(1メートルで1センチ下がる)の勾配」が基準とされています。この勾配が確保できないと、水が逆流し水漏れの原因となります。
まとめ:隠蔽配管は将来を見据えた計画性が重要!
エアコンの隠蔽配管は、「見た目の美しさ」という非常に大きなメリットがある一方で、「高額な費用」や「メンテナンス性の低さ」「トラブル時のリスク」という深刻なデメリットを併せ持つ、ハイリスク・ハイリターンな選択肢です。
後悔しないための最大のポイントは、新築時(またはリフォーム時)の計画性です。
- 将来のエアコン交換(加湿機能付きなど)を見越して、必要な配管をすべて通しておく。
- メンテナンスや修理がしやすいよう、点検口を設ける。
- ドレンホースは詰まりにくいよう、確実な勾配と太さを確保する。
これらのデメリットをすべて理解し、対策を講じてくれる信頼できる施工業者(ハウスメーカーや工務店、空調専門業者)を見つけることが、隠蔽配管を成功させる唯一の鍵となります。
ご自身のライフプランや予算と照らし合わせ、最適な選択をしてくださいね。


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