「3階の部屋にエアコンを付けたいけれど、ベランダがない…」とお困りではありませんか?室外機を置く場所がなく、取り付けを諦めている方も多いかもしれません。
確かに、3階でベランダなしのエアコン取り付けは、標準工事と比べて難易度が高く、費用もかさみがちです。しかし、適切な設置方法を選び、信頼できる業者に依頼すれば、問題なく設置可能です。
この記事では、ベランダなしの3階にエアコンを取り付ける具体的な4つの方法、高額になりがちな費用相場、工事を断られた時の対処法、そして賃貸物件での注意点まで徹底的に解説します。この記事を読めば、あなたの状況に最適な解決策が見つかります。
なぜ3階でベランダなしの取り付けは難しい?
3階でベランダがない場合、エアコン取り付けが難しくなる理由は「室外機の設置場所」と「作業の危険度」にあります。
室外機を置く場所がない
最も根本的な問題です。通常はベランダの床に置く室外機ですが、その場所がないため、1階の地面、外壁、屋根など、特殊な場所への設置を検討する必要があります。これにより、使用する部材や作業工程が通常と大きく異なります。
危険を伴う「高所作業」
3階の外壁での作業は、当然ながら高所作業となります。作業員が窓から身を乗り出したり、不安定なはしごを使ったりして作業する必要があり、常に危険が伴います。これが工事の難易度を引き上げる最大の要因です。
安全確保のための法律とコスト
高所作業における安全確保は、事業者の義務として法律(労働安全衛生法など)で定められています。2m以上の高さで作業する場合、安全帯(ハーネス)の使用や、場合によっては足場の設置が求められます。
高所作業費とは、こうした安全対策のコストや作業員の危険手当、専門技術料であり、工事費が高くなる正当な理由なのです。
4つの室外機設置方法
室外機を置く場所がない場合、主に以下の4つの設置方法が検討されます。建物の構造や周囲の状況によって最適な方法は異なります。
1. 立ちおろし(1階地面に設置)
最も一般的で、比較的コストを抑えられる方法です。室内機を3階に設置し、配管を外壁に沿って1階の地面まで伸ばし(立ちおろし)、そこに室外機を設置します。
- メリット:比較的安全に作業でき、費用も他の特殊工事より安い傾向
- デメリット:配管が長くなるため、追加の配管延長料金がかかる
- デメリット:外壁に長い配管が露出するため、外観に影響が出る(化粧カバー推奨)
- デメリット:1階に室外機を置くためのスペースが必要

2. 壁面設置(外壁に取り付け)
3階の窓のすぐ下や横など、外壁に専用の金具(壁面金具)を取り付け、そこに室外機を設置する方法です。高所作業が必須となります。
- メリット:配管の延長を最短にできる
- メリット:1階にスペースがなくても設置可能
- デメリット:高所作業費や壁面金具代など、費用が高額になる
- デメリット:外壁に強度がないと設置できない
- デメリット:室外機の振動や音が室内に伝わりやすい場合がある
3. 天吊り設置(軒下などに吊るす)
マンションやアパートの共用廊下側などで見られる方法です。3階の天井(軒下など)から専用の金具(天吊り金具)で室外機を吊り下げて設置します。
- メリット:足元のスペースを確保できる
- デメリット:設置できる場所が限られる(強固な天井が必要)
- デメリット:高所作業費や天吊り金具代で費用がかさむ
- デメリット:賃貸物件や分譲マンションでは許可が下りにくい
4. 屋根置き設置(屋根に設置)
3階のすぐ上に陸屋根(平らな屋根)や、緩やかな勾配の屋根がある場合に用いられる方法です。専用の金具(屋根置き金具)で屋根に固定します。
- メリット:1階や壁面にスペースがなくても設置できる
- デメリット:屋根の形状や材質によっては設置不可
- デメリット:高所作業費、屋根置き金具代がかかる
- デメリット:屋根に穴を開ける場合、雨漏りのリスク管理が必要
高所作業の費用相場と総額目安
3階のエアコン取り付けは、標準工事費(15,000円~20,000円程度)に、複数の追加料金が加算されるため、総額が高額になるケースがほとんどです。
標準工事費との差額はいくら?
標準工事は、通常「室外機はベランダや地面に置ける」「配管長は4m以内」といった条件を前提としています。3階でベランダなしの場合は、これらの条件をほぼ満たさないため、以下のような追加費用が発生します。
特殊作業の追加料金(目安)
高所作業費は、作業の危険度や使用する機材によって変動します。3階の場合、はしごを使った作業や、場合によっては足場や高所作業車が必要になることもあります。
| 作業内容 | 費用相場(目安) |
|---|---|
| 高所作業費(3階はしご作業) | 10,000円 ~ 20,000円程度 |
| 壁面設置(金具代+作業費) | 15,000円 ~ 30,000円程度 |
| 天吊り設置(金具代+作業費) | 15,000円 ~ 30,000円程度 |
| 屋根置き設置(金具代+作業費) | 15,000円 ~ 30,000円程度 |
※上記はあくまで目安です。現場の状況や業者によって大きく異なります。
配管延長と化粧カバーの料金
特に「立ちおろし」の場合、配管が標準の4mを大幅に超えます。3階から1階までは、約8m~10mの配管が必要になることが一般的です。
- 配管延長(1mあたり):2,000円 ~ 3,500円
- 化粧カバー(室外用):5,000円 ~ 15,000円(長さによる)
例えば、配管が6m延長(合計10m)した場合、それだけで12,000円~21,000円の追加費用がかかります。配管はむき出しだと数年で劣化するため、外観を整え、配管を保護するために化粧カバーの設置を強く推奨します。
費用の総額目安
では、総額はいくらになるのでしょうか?
「立ちおろし」の場合、「標準工事費」+「高所作業費」+「配管延長費」+「化粧カバー代」がかかります。 目安として、総額で5万円~8万円程度になるケースが多いようです。壁面設置や天吊りの場合も、金具代を含めると同等か、それ以上になる可能性もあります。
失敗しない業者の選び方
高額で危険も伴う工事だからこそ、業者選びは非常に重要です。以下の4つのポイントを押さえてください。
1. 高所作業の実績を確認する
「3階」「ベランダなし」といった特殊な工事の経験が豊富な業者を選びましょう。安さだけで選ぶと、経験不足から作業を断られたり、安全面や仕上がりに問題が出たりする可能性があります。公式サイトの施工事例などを確認すると良いでしょう。
2. 必ず複数社から「訪問見積もり」を取る
最低でも2~3社からは「訪問見積もり」を受けてください。電話やメールだけの簡易見積もりでは、当日になって「はしごが届かない」「作業できない」と追加料金を請求されるか、最悪キャンセルされるトラブルがあり得ます。
訪問見積もりで、作業内容(はしごで可能か、足場が必要かなど)と、総額を確定させることが重要です。
3. なぜ量販店では断られる?
家電量販店やネット通販でエアコン本体を安く購入しても、その下請け業者に「3階でベランダなし」の工事を断られるケースは非常に多いです。
理由は、下請け業者は「標準工事」を前提に契約していることが多く、リスクの高い高所作業や特殊作業を避ける傾向があるためです。また、3階まで届く長いはしごを常備していないこともあります。最初から「高所作業専門」をうたう業者に依頼する方がスムーズです。
4. 保証内容と追加料金の有無
工事後の保証(ガス漏れや水漏れなど)がしっかりしているかを確認しましょう。また、「見積もり以外の追加料金は一切発生しない」ことを書面で確認しておくと、より安心です。
工事を断られた時の対処法
「はしごがかけられない」「危険すぎる」といった理由で業者に工事を断られても、諦めるのはまだ早いです。以下の対処法を検討してください。
はしごをかけるスペースがない場合
最も多い理由が「建物の壁面から、はしごの足元までに十分なスペース(約2m~)が確保できない」ケースです。この場合、隣家の敷地をお借りしないとはしごが立てられないことがあります。
隣家の方と良好な関係であれば、工事の日時と内容を丁寧に説明し、敷地使用の許可を頂けないか交渉してみる価値はあります。
高所作業車や足場を検討する
はしごが無理でも、高所作業車や部分的な足場を組むことで作業が可能になる場合があります。ただし、これらの費用は非常に高額(数万円~十数万円)になるため、エアコン設置費用としては現実的かどうかの判断が必要です。
地域の専門工事業者を探す
量販店の下請けに断られても、地域密着のエアコン専門業者や、高所作業を専門とする業者なら対応できる場合があります。「エアコン 高所作業 〇〇(地域名)」などで検索し、訪問見積もりを依頼してみましょう。
賃貸物件で取り付ける場合の注意点
賃貸物件の場合は、工事の前にクリアすべきハードルがあります。独断で進めると、深刻なトラブルに発展する可能性があります。
まずオーナーに設置交渉する
工事の相談の前に、まずは大家さん(オーナー)や管理会社に「エアコンがなくて困っている。設置してもらえないか」と交渉してみましょう。設備としてオーナー負担で設置してもらえるのが最善のケースです。(参照:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)
工事の許可を必ず取る
自分で設置することになった場合、最も重要なことです。必ず工事前に大家さんや管理会社に連絡し、「自費でエアコンを設置したい」旨を相談してください。高所作業や特殊な設置方法になることも含めて説明し、許可を得る必要があります。
壁の穴あけは可能か
エアコン設置には、壁に配管用の穴を開ける必要があります。すでに穴が空いている場合は問題ありませんが、新規で穴あけが必要な場合、建物の構造上できなかったり、許可が下りなかったりする場合があります。
退去時の原状回復について
設置が許可された場合でも、退去時にどうするかを明確にしておく必要があります。「エアコン本体は残していって良いか(残置物)」「壁の穴はどうするか」など、原状回復の義務について書面で確認しておくと安心です。
どうしても設置できない場合の代替案
建物の構造上、どうしても工事ができない場合の最終手段として、以下の代替案があります。
窓用エアコンのメリット・デメリット
窓枠に取り付けるだけで、室外機が不要(一体型)のエアコンです。工事のハードルは格段に下がります。
- メリット:工事不要(DIYも可能)、高所作業費がかからない
- デメリット:通常の壁掛けエアコンより冷暖房能力が低い傾向
- デメリット:運転音が大きい
- デメリット:窓の密閉性が下がり、防犯面で不安が残る
- デメリット:取り付け可能な窓の形状やサイズが限られる
ポータブルクーラー(冷風機)
キャスター付きで移動可能な冷房器具です。本体から出る排熱を、付属のダクトで窓から逃がす必要があります。
- メリット:工事一切不要、どこでも使える
- デメリット:排熱ダクトを窓に設置する必要がある
- デメリット:冷却能力はエアコンや窓用エアコンより劣る
- デメリット:運転音が大きく、本体も場所を取る
よくある質問
絶対にやめてください。エアコンの設置には電気工事士の資格が必要な作業が含まれる場合がありますし、3階からの高所作業はプロでも命綱を使う危険な作業です。重大な事故につながるため、必ず専門業者に依頼してください。
可能性はあります。室外機の振動が、壁面金具を通じて建物に伝わり、室内に騒音や振動として響くことがあります。これを軽減するため、設置時に「防振ゴム」を使用してもらうよう業者に相談することをおすすめします。
はい、わずかに効率は低下します。配管が長くなるほど、冷媒ガスが移動する距離が長くなり、熱交換の効率が落ちるためです。ただし、3階から1階(10m程度)であれば、メーカーの許容範囲内であることがほとんどで、体感できるほどの大きな差が出ることは稀です。それよりも、設置できることのメリットが上回るでしょう。

まとめ:諦める前に専門業者へ相談を
「3階でベランダなし」という厳しい条件でも、エアコンの取り付けを諦める必要はありません。ご紹介したように、室外機の設置には「立ちおろし」「壁面設置」など複数の選択肢があります。
ただし、費用は標準工事よりも高額になり、専門的な技術が求められることは事実です。
重要なのは、あなたの建物の状況を正確に把握し、安全で確実な施工ができる業者を見つけることです。量販店で断られても、高所作業の経験が豊富な地域の専門業者なら、解決策を提案してくれる可能性があります。
まずは、高所作業や特殊工事の実績が豊富な専門業者に、訪問見積もりを依頼することから始めてみましょう。適切な見積もりと提案を受け、この夏の快適な生活を手に入れてください。


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