「寝るときは静かにしたいから、エアコンを『しずかモード』にしている」
「運転音は静かで快適だけど、しずかモードって電気代は高くなるの?」
エアコンの「しずかモード(静音運転)」は、音を抑えてくれる便利な機能ですよね。しかし、その静かさと引き換えに、電気代がどうなっているのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、エアコンのしずかモードと電気代の関係を徹底解説します。結論から言うと、しずかモードは使い方を間違えると電気代が高くなります。
「自動運転」との電気代比較や、節約効果を高める5つの賢い使い方まで、あなたの疑問をスッキリ解決します。
エアコンのしずかモード(静音運転)とは?
まず、しずかモードがどのような機能なのか、基本的な仕組みから確認しましょう。
基本的な仕組み
しずかモードは、その名の通り「運転音を静かにする」ことを最優先にしたモードです。
多くのエアコンでは、以下の2点を制御することで静音化を実現しています。
- 室内機の風量を「弱」または「微風」にする
運転音の主な原因であるファンの回転を抑え、風の音を小さくします。 - 室外機のコンプレッサー(圧縮機)の回転数を抑える
室外機の「ブーン」という動作音も、パワーを抑えることで静かにします。
つまり、しずかモードは「エアコン全体のパワーをあえて落とし、静かにゆっくり運転するモード」なのです。
メーカーによる名称の違い
「しずかモード」は一般的な呼称ですが、メーカーによって名称が異なる場合があります。
- 静音運転
- おやすみモード(就寝時に特化し、温度調整も含む場合がある)
- ナイトモード
機能はほぼ同じで、いずれも運転音を抑えることを目的としています。
主な利用シーン
しずかモードが活躍するのは、以下のように生活音をできるだけ抑えたい場面です。
- 就寝時(寝るとき)
- 赤ちゃんや小さな子供がお昼寝しているとき
- 勉強や仕事、読書などで集中したいとき
- テレビの音や会話を妨げたくないとき

あくまで「静音性」を優先するモードであり、「節電」を最優先にした機能ではない、という点が重要なポイントです!
しずかモードの電気代は高い?安い?
では、本題の電気代についてです。パワーを抑えるしずかモードは、電気代が安くなるのでしょうか?
結論:瞬間電力は低いが総額は高くなる可能性
エアコンの電気代は「消費電力」で決まります。しずかモードはパワーを抑えて運転するため、運転中の瞬間的な消費電力は、強風運転や自動運転(フルパワー時)に比べて低くなります。
しかし、これが落とし穴です。瞬間的な消費電力が低いからといって、トータルの電気代が安くなるとは限りません。
電気代が高くなる理由
しずかモードの弱点は、「部屋が設定温度になるまでに時間がかかる」ことです。
エアコンは、室温と設定温度の差が大きい「起動時」に最も電力を消費し、設定温度に達した後の「温度維持」では消費電力が小さくなります。
もし、真夏の暑い部屋で「しずかモード」を使うと、パワーが弱いために設定温度に達するまで非常に長い時間がかかります。弱い力でダラダラと運転を続ける結果、かえってトータルの消費電力が大きくなり、電気代が高くついてしまうのです。
【注意】暖房時の使用はさらに電気代がかかる
特に注意が必要なのが「暖房」です。冬場は、冷房時よりも室温と設定温度の差が大きくなりやすいため、より多くのパワーを必要とします。
寒い部屋で「しずかモード」の暖房運転をすると、部屋が暖まるまでに時間がかかりすぎ、冷房時以上に電気代が高くなる可能性が非常に高いため、おすすめできません。
しずかモードと自動運転を徹底比較
では、電気代と快適性を両立させるには、どのモードを使えば良いのでしょうか。それは「自動運転」です。
電気代が安いのはどっち?
結論から言うと、電気代の節約を最優先するなら「自動運転」一択です。
自動運転モードは、センサーが室温や湿度(機種による)を検知し、最も効率よく設定温度に到達・維持できるよう、AIが風量や運転モードを自動で調整してくれます。
- 起動時:強風で一気に部屋を快適な温度にする
- 安定時:パワーを抑えた省エネ運転に切り替える
常に最適なパワーで運転するため、無駄な電力消費が最も少ないモードです。多くのエアコンメーカーも「自動運転」を推奨しています。
ダイキンの検証データで見る節約効果
空調メーカーのダイキン工業が行った実証実験では、この違いが明確に示されています。
冷房運転(設定温度26℃)で、「風量:自動」と「風量:弱(しずかモードに相当)」を比較したところ、以下のような結果が出ています。
| 風量設定 | 11時間(日中)の消費電力量 | 1ヶ月あたりの電気代換算(差額) |
|---|---|---|
| 自動 | 2.79kWh | 基準 |
| 弱(しずか) | 3.85kWh | 自動より約990円高い |
(参照:ダイキン工業「エアコン冷房で誤解の多い4つの節電術を検証せよ!」 )この実験では、風量「弱」(しずかモード)は「自動」に比べて消費電力が約3割も多く、電気代が月約990円も高くなる結果となりました。
理由は、風量「弱」だと部屋を冷やすのに時間がかかり、結果的にコンプレッサー(圧縮機)の負荷が増加し、より多くの電気を使ってしまったためです。
しずかモードの明確なデメリット
電気代以外にも、しずかモードには知っておくべきデメリットがあります。
1. 部屋が冷える・暖まるのが遅い
最大のデメリットは、その「効きの悪さ」です。パワーを抑えているため、当然ながら部屋が快適な温度になるまで時間がかかります。「エアコンが効かない」と感じる原因にもなります。
暑い日や寒い日にすぐに快適になりたい場合には、全く適していません。
2. 除湿(ドライ)効果が弱まる
これは除湿運転時に「しずかモード」を使った場合です。除湿は、室内の湿った空気を吸い込み、冷やして水分を取り除く仕組みです。
しずかモードにすると、吸い込む空気の量(風量)が減るため、結果的に除湿能力も低下してしまいます。ジメジメした梅雨時など、しっかり除湿したい場面には不向きです。

静かさを取るか、電気代と快適性(効き目)を取るか、トレードオフの関係にあると理解しておきましょう。
電気代を賢く節約する5つの使い方
では、しずかモードのメリット(静音性)を活かしつつ、電気代も抑えるにはどうすれば良いのでしょうか。答えは「使い分け」です。
1. 基本は「自動運転」で一気に冷やす
帰宅時や日中の活動時間帯など、室温と設定温度の差が大きい時は、迷わず「自動運転」を使いましょう。これが最も早く快適になり、トータルの電気代も安く済みます。
2. 「しずかモード」は室温安定後に
しずかモードの出番は、部屋がすでに快適な温度になった後です。
例えば、就寝時。「自動運転」で寝室を快適な温度にしておき、ベッドに入るタイミングで「しずかモード」や「おやすみモード」に切り替えます。これなら、温度維持のための低パワー運転なので電気代の心配も少なく、静かに眠ることができます。
3. サーキュレーターで空気を循環
冷たい空気は下に、暖かい空気は上に溜まりがちです。サーキュレーターや扇風機を併用して室内の空気を循環させると、部屋全体の温度ムラがなくなり、エアコンの効率が格段に上がります。
効率が上がれば、エアコンが「温度維持」モードに入るのも早くなり、節電につながります。
4. フィルター掃除は2週間に1回
エアコンのフィルターが目詰まりすると、空気を吸い込む力が弱まり、部屋を冷やす(暖める)ために余計なパワーが必要になります。これは、しずかモードでも自動運転でも同様に電気代の無駄遣いにつながります。
2週間に1回程度を目安にフィルターを掃除するだけで、数%〜10%以上の節電効果が期待できます。(参照:経済産業省 資源エネルギー庁)
5. 室外機の環境を整える
室外機の吹き出し口の前に物を置いたり、雑草が覆いかぶさったりしていると、熱交換の効率が悪くなります。室外機の周りは常に整理整頓し、風通しを良くしておきましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. しずかモードで「つけっぱなし」はOK?
A. 就寝時に「寝る時から朝まで」といった使い方であれば問題ありません。
ただし、日中の暑い時間帯や、人の出入りが多いリビングなどでしずかモードをつけっぱなしにすると、室温が上昇した際に設定温度に戻す力が弱いため、不快に感じたり、結果的に電気代がかさんだりする可能性があるため、おすすめできません。
Q. しずかモードなのに音がうるさい原因は?
A. 室内機のファンではなく、室外機が原因である可能性が高いです。
しずかモードは室内機の風量を抑えますが、室温と設定温度の差が大きい場合、室外機のコンプレッサーはフルパワーで稼働しようとします。その結果「室内は静かなのに、外がうるさい」という状況が起こり得ます。
また、エアコン本体の異常(フィルターの極端な詰まり、内部の汚れ、部品のガタつき)が原因で異音が発生している可能性もあるため、掃除をしても改善しない場合は専門業者による点検を検討してください。
まとめ:しずかモードは自動運転との使い分けが鍵
エアコンの「しずかモード」と「電気代」について解説しました。
重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- しずかモードは「節電モード」ではなく「静音優先モード」である
- パワーが弱いため、設定温度に達するまで時間がかかり、使い方を誤ると電気代は逆に高くなる
- ダイキンの実験では、自動運転より消費電力が約3割多いという結果も出ている
- 電気代の節約は「自動運転」が最強
これからは、シーンに応じて賢く使い分けることをおすすめします。
「日中は自動運転で効率よく節電し、室温が安定した就寝時だけしずかモードで快眠する」
これが、快適さと電気代の節約を両立させる最も賢い使い方です。ぜひ、今日から実践してみてください。
