「隣の部屋までエアコン1台で冷やしたい」「エアコンを2台買うのはコストがかかる…」そんな悩みを抱えていませんか?
エアコン一台で二部屋をまかなうことができれば、購入費用も電気代も節約できそうですよね。しかし、本当に電気代は安くなるのでしょうか?
この記事では、エアコン1台で2部屋を冷暖房する場合の電気代の考え方、成功しやすい間取り、そして電気代を最小限に抑えるための具体的な5つの節約術を徹底解説します。
あなたの家の間取りで最も賢く快適に過ごす方法を見つけましょう。
エアコン一台で二部屋を冷暖房すると電気代がお得になる?
結論:工夫次第で節約可能だが逆効果にも
いきなり結論からお伝えすると、「効率よく空気を循環させる」という条件付きで、1台の方が電気代は安くなる可能性が高いです。
しかし、この「空気の循環」を怠ると、エアコンは「二部屋分の広い空間がまだ設定温度になっていない」と判断し、常にフルパワーで運転し続けます。この状態が続くと、結果的に小型エアコン2台を別々に動かすより電気代が高くなるリスクもあるため、注意が必要です。
1台vs2台の電気代シミュレーション
「6畳用のエアコン2台」と「12畳用のエアコン1台」の電気代は、どちらが安いのでしょうか。エアコンの運転特性を踏まえて比較してみましょう。(電気代単価は31円/kWhで試算)
【電気代比較】1時間の運転モデル
(A) 6畳用×2台を各部屋で運転
- 運転開始(高負荷):6畳用 500W × 2台 = 1000W(約31円/時)
- 設定温度到達後(低負荷):200W × 2台 = 400W(約12.4円/時)
- 特徴:短時間で設定温度に達し、すぐに省エネ運転に移りやすい。
(B) 12畳用×1台で二部屋を運転(空気循環あり)
- 運転開始(高負荷):12畳用 800W × 1台 = 800W(約24.8円/時)
- 設定温度到達後(低負荷):300W × 1台 = 300W(約9.3円/時)
- 特徴:効率よく循環できれば、合計の消費電力は(A)より低くなる。
(C) 12畳用×1台で二部屋を運転(空気循環なし)
- 運転状態:遠い部屋が冷えず、設定温度に達しないため高負荷運転(800W)が継続
- 特徴:(A)の低負荷運転(400W)と比べ、2倍近い電気代がかかり続ける可能性も。
このシミュレーションからわかるように、1台で二部屋をまかなう場合は、いかに早く設定温度に到達させ、低負荷運転の時間を長くするかが電気代節約の最大のカギとなります。
「マルチエアコン」という選択肢は?
「室外機を置く場所が1台分しかない」という場合、「マルチエアコン」という選択肢もあります。これは、1台の室外機で複数台(2台など)の室内機を動かすタイプのエアコンです。
しかし、マルチエアコンはメリットばかりではありません。導入前に以下のデメリットを必ず確認してください。
- 複数の室内機を同時に動かすとパワーが落ちやすい
- 室外機が故障すると全ての部屋のエアコンが使えなくなる
- 通常のエアコンより本体価格が高価になりがち
- 選べる機種が少ない
1台運用と2台運用のメリット・デメリット比較
エアコン一台で二部屋をまかなう場合と、各部屋に1台ずつ(合計2台)設置する場合のメリット・デメリットを整理しました。
| エアコン1台で二部屋 | エアコン2台を各部屋に設置 | |
|---|---|---|
| メリット |
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| デメリット |
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一台運用が向いている間取り・向かない間取り
エアコン一台で二部屋をまかなう作戦が成功するかどうかは、「間取り」が8割を占めると言っても過言ではありません。どのような間取りが向いているのか、詳しく見ていきましょう。
成功しやすい間取り(続き間)
最も成功しやすいのは、ふすまや引き戸で仕切られた「続き間」です。
- リビングと隣接する和室
- 引き戸で仕切られた子供部屋二部屋
これらの間取りは、仕切りを開放すれば大きな一つの空間として空気が循環しやすいため、1台運用に最適です。
失敗しやすい間取り(要注意)
逆に、以下のような間取りは空気の循環が難しく、1台運用が失敗しやすい(=電気代が無駄になる)ため、素直に2台設置を検討することをおすすめします。
- 廊下やホールを挟む部屋:冷気や暖気が廊下に逃げてしまい、効率が著しく悪化する
- L字型や複雑な形状の部屋:エアコンの風が届かない「死角」ができやすい
- ドア一枚でしか繋がっていない部屋:空気の通り道が狭すぎ、十分な循環が望めない
ロフトや吹き抜けへの応用
「二部屋」ではありませんが、ロフトや吹き抜けも「一つの空間にある温度ムラ」という点で共通の課題を持っています。空気の性質を利用すれば、サーキュレーターで快適にできます。
- 暖房時(冬):暖かい空気は天井やロフトにたまります。サーキュレーターを「上向き」に運転させ、たまった暖気を下に降ろします。
- 冷房時(夏):冷たい空気は床や階下にたまります。サーキュレーターで冷気をロフトや吹き抜けの上部へ送り込みます。
電気代を最小化!一台で二部屋を快適にする5つの方法
1台運用を成功させるには「空気の循環」と「エアコンの負荷軽減」がすべてです。誰でも簡単に実践できる5つの方法を紹介します。
方法1:サーキュレーターを活用する
エアコン1台で二部屋をカバーするなら、サーキュレーターや扇風機は必須アイテムです。空気には「冷たい空気は下に、暖かい空気は上に」たまる性質があります。これをサーキュレーターで強制的に循環させ、温度ムラをなくすことが最大の節約につながります。
方法2:サーキュレーターの最適な置き方(冷房時)
冷房時、冷たい空気は床にたまります。エアコンが設置されている部屋から、エアコンのない隣の部屋へ、床にたまった冷気を送り込むイメージで設置します。
- エアコンを背にするようにサーキュレーターを置く
- エアコンのない部屋の床に向けて、まっすぐ風を送る
- これにより、冷たい空気が隣の部屋に流れ込み、押し出された暖かい空気がエアコンのある部屋に戻ってくる循環が生まれる
方法3:サーキュレーターの最適な置き方(暖房時)
暖房時、暖かい空気は天井にたまります。エアコンのある部屋の天井にたまった暖気を、隣の部屋にも行き渡らせる必要があります。
- エアコンのある部屋の中央付近にサーキュレーターを置く
- サーキュレーターの向きを「真上(天井)」に向ける
- 天井にたまった暖かい空気を一度拡散させ、部屋全体の空気を動かすことで、隣の部屋にも暖気が流れ込みやすくなる

冷房は「床から隣へ」
暖房は「部屋の中央から真上へ」
と覚えると簡単ですよ!
方法4:部屋の仕切り(ふすま)を工夫する
空気の通り道をできるだけ広く確保することが重要です。ふすまや引き戸は最大限開けるだけでなく、可能であれば完全に取り外してしまいましょう。
取り外しが難しい場合は、アコーディオンドアや間仕切り用のカーテンに変更し、空気の抵抗を減らすのも効果的です。
方法5:フィルター掃除と室外機の環境整備
これはエアコン節約の基本ですが、1台で広い範囲をカバーする場合は特に重要です。フィルターが目詰まりすると、エアコンは空気を吸い込む力が弱まり、余計な電力が必要になります。(参照:経済産業省 資源エネルギー庁)
2週間に1回を目安にフィルターを掃除することに加え、室外機の環境もチェックしましょう。
- 室外機の吹き出し口の前に物を置かない
- 夏場は「よしず」などで日よけを作り、室外機本体が高温になるのを防ぐ
二部屋用エアコンの賢い選び方と畳数の目安
畳数の目安は合計より大きめを選ぶ
エアコン1台で二部屋をまかなう場合、エアコンの「畳数の目安」はどのように選べばよいのでしょうか?
例えば「6畳」と「8畳」の二部屋(合計14畳)の場合、単純に「14畳用」を選ぶのは危険です。壁や間取りで仕切られている分、エアコンの効率は必ず落ちます。
そのため、二部屋の合計畳数よりも「ワンランク上」の畳数(例:合計14畳なら16畳用や18畳用など)を選ぶことをおすすめします。パワーに余裕がある方が、結果的にフルパワー運転の時間が短くなり、電気代が安くなる可能性が高いためです。
省エネ性能(APF)をチェックする
エアコンの省エネ性能を示す指標として「APF(通年エネルギー消費効率)」があります。この数値が大きいほど、年間のエネルギー消費効率が良い(=電気代が安い)ことを示します。
1台で長時間運転することが予想されるため、初期費用が多少高くても、APFの数値が高い省エネモデルを選んだ方が、長期的な電気代(ランニングコスト)を抑えることができます。
二部屋向けの機能で選ぶ
最近のエアコンには、二部屋運用を助けてくれる便利な機能が搭載されているモデルもあります。
- ワイド気流・ロング気流:より遠く、より広い範囲に風を送る機能。隣の部屋まで直接気流を届けたい場合に有効です。
- 各種センサー(人感・床温度):人のいる場所や、温度ムラができやすい床・壁の温度を検知し、自動で風向きや風量を調整してくれる機能です。
よくある質問(Q&A)
二部屋の「仕切りの近く(間)」や「より広い方の部屋」に設置するのが基本です。その上で、エアコンの風が隣の部屋に向かって流れやすい位置を選び、サーキュレーターでその流れを補助するのが最も効率的です。
1台で二部屋をまかなう場合は「つけっぱなし」の方が得になる可能性が高いです。広い空間全体が設定温度に達するまでには時間がかかります。電源をこまめにオン・オフすると、その度に高負荷な「フルパワー運転」が繰り返され、逆に電気代が高くつきます。30分~1時間程度の外出であれば、設定温度を少し緩めて(冷房なら上げる、暖房なら下げる)、つけっぱなしにしておく方が経済的です。
可能です。ただし、前述の通り、仕切りはできるだけ全開にしてください。ふすまを数センチ開けている程度では、空気はほとんど循環しません。サーキュレーターを併用し、空気の通り道をしっかり作ることが前提となります。
サーキュレーターの消費電力は非常に小さく、モデルにもよりますが1時間あたり約1円以下のものがほとんどです。エアコンの設定温度を1℃変えるだけで電気代は約10%変わると言われています(参照:経済産業省 資源エネルギー庁)。サーキュレーターを併用してエアコンの設定温度を控えめにできるメリットを考えれば、電気代は大幅に節約できます。
まとめ:エアコン一台で二部屋は「間取り」と「空気循環」が鍵
エアコン一台で二部屋をまかなうことは、初期費用と電気代の両方を節約できる可能性を秘めた、非常に賢い方法です。しかし、間取りや使い方を間違えると、かえって電気代が高くなるリスクも伴います。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- 電気代:工夫次第で安くなるが、空気循環を怠ると2台より高くなるリスクあり
- 間取り:ふすまや引き戸の「続き間」は成功しやすい。廊下を挟む部屋は不向き
- 最重要対策:サーキュレーターで空気を強制循環させること
- 置き方(冷房):エアコンを背に、隣の部屋の「床」へ送る
- 置き方(暖房):部屋の中央で「真上」へ送り、天井の暖気を拡散させる
- エアコン選び:合計畳数より「ワンランク上」で「省エネ(APF)」な機種を選ぶ
- 運転方法:こまめなオン・オフは避け、「つけっぱなし」運転が効果的
まずはご自宅の間取りを確認し、サーキュレーターを一台用意して空気の流れを意識することから始めてみませんか? 少しの工夫で、夏の電気代も冬の電気代も賢く節約し、快適な生活を手に入れましょう。
