「暗いところでテレビを見ていると、目が悪くなるわよ!」
子どもの頃、親からこう注意された経験はありませんか?
まるで常識のように語り継がれてきたこの言葉。しかし、「本当にそうなの?何か科学的な根拠はあるの?」と疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
実は、「暗いところでテレビを見ると目が悪くなる(視力が低下する)」という説に、直接的な医学的根拠はありません。
この記事では、なぜ「嘘」だと言えるのか、その理由を専門的な観点から分かりやすく解説します。
さらに、視力低下には繋がらなくても、目に良くない影響があるのは事実です。その本当の原因と、今日からすぐに実践できる目に優しいテレビの視聴方法まで、徹底的に掘り下げていきます。
この記事を読み終える頃には、長年の疑問がスッキリ解消し、安心してテレビを楽しめるようになっているはずです。
【結論】「暗いところでテレビを見ると目が悪くなる」は嘘!
さっそく結論からお伝えします。
「暗いところでテレビを見ると視力が低下する」ということに、直接的な医学的・科学的根拠はありません。
これは多くの眼科医や専門家が指摘している事実です。
暗い場所で物を見ることが、近視や乱視を進行させる直接の原因になるというデータは、現在のところ存在しないのです。
「え、じゃあなんであんなに言われ続けてきたの?」と疑問に思いますよね。
それには、いくつかの理由が考えられます。

なぜ「目が悪くなる」という噂が広まったのか?
この説が広く信じられてきた背景には、主に2つの理由があると考えられています。
- 目の疲れやすさからの誤解: 暗い部屋でテレビを見ると、目が非常に疲れやすくなります(この理由は後ほど詳しく解説します)。この「目の疲れ」が、いつの間にか「視力低下」と混同されて、「目が悪くなる」という表現で広まってしまったと考えられます。
- しつけの一環として: 特に子どもに対して、「夜更かししないで早く寝てほしい」「テレビばかり見ていないでほしい」という親心から、しつけの言葉として使われてきた側面も大きいでしょう。「目が悪くなる」と言われれば、子どもは言うことを聞きやすいですよね。
このように、医学的根拠というよりは、体感的な疲れや生活習慣のしつけといった背景から広まった「言い伝え」のようなものだったのです。
目が悪くなるは嘘でも…暗い部屋でのテレビ視聴が引き起こす3つの悪影響
「なんだ、嘘だったのか!じゃあ、これからは気にせず暗い部屋でテレビを見よう!」と思った方、少し待ってください。
視力低下に直接結びつかないだけで、暗い部屋でのテレビ視聴が目に大きな負担をかけることは事実です。
ここでは、具体的にどのような悪影響があるのかを3つご紹介します。
1. 激しい目の疲れ(眼精疲労)
最も大きな影響が、眼精疲労(がんせいひろう)です。
私たちの目の「瞳孔(どうこう)」は、カメラの絞りのように、入ってくる光の量を調整しています。
明るい場所では瞳孔が小さくなり、暗い場所では大きくなります。
暗い部屋で明るいテレビ画面を見ると、目の前のテレビは「明るい」のに、周囲は「暗い」という矛盾した状況になります。
そのため、瞳孔は頻繁に大きさを変えようと働き続け、ピントを調節する筋肉(毛様体筋)が常に緊張状態に陥ります。
この筋肉疲労が、目のしょぼしょぼ感やかすみ、痛みといった症状を引き起こすのです。ひどい場合には、頭痛や肩こり、吐き気につながることもあります。
2. ドライアイ
テレビ画面に集中していると、自然とまばたきの回数が減ってしまいます。
普段、私たちは1分間に約20〜30回まばたきをしていますが、画面に集中するとその回数が半分以下に減るとも言われています。
まばたきには、目の表面を涙で潤し、乾燥やゴミから守る大切な役割があります。
その回数が減ることで目が乾き、ドライアイを引き起こしやすくなるのです。
目がゴロゴロする、光がまぶしく感じるなどの症状があれば、ドライアイのサインかもしれません。
3. 睡眠の質の低下(ブルーライト)
テレビやスマートフォンなどの画面からは、「ブルーライト」という強いエネルギーを持つ光が発せられています。
このブルーライトを夜間に浴びると、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の分泌が抑制されてしまいます。
その結果、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりと、睡眠の質が低下する可能性があります。
特に寝る直前まで暗い部屋でテレビを見ていると、脳が「昼間だ」と勘違いしてしまい、体内時計が乱れる原因にもなります。
【特に注意!】子どもの目への影響は?
大人でも負担がかかるのですから、目がまだ発達段階にある子どもはさらに注意が必要です。
子どもの目はピント調節機能が非常に高く、大人よりも無理がきいてしまいます。そのため、本人は疲れを自覚していなくても、目には相当な負担がかかっている場合があります。
「暗い部屋でテレビを見る」という行為が習慣化してしまうと、慢性的な眼精疲労や、それに伴う集中力の低下などを引き起こす可能性も考えられます。
視力低下に直接繋がらないからといって安心せず、子どものテレビ視聴環境には、大人がしっかりと気を配ってあげることが大切ですね。
【今日からできる!】目に優しいテレビの正しい見方5選
では、どうすれば目に負担をかけずにテレビを楽しめるのでしょうか?
難しいことはありません。今日からすぐに実践できる5つのポイントをご紹介します。
1. 部屋を明るくして見る
最も基本的で重要なポイントです。
テレビ画面の明るさと、周囲の明るさの差をなくすことが、目の負担を軽減する鍵です。
部屋の照明をつけ、できるだけ部屋全体を明るくしてテレビを見ましょう。
テレビの真上や背後から直接光が当たるのではなく、部屋全体をふんわりと照らす間接照明などを活用するのも非常におすすめです。

2. テレビから適切な距離をとる
テレビに近づきすぎると、その分、目の筋肉に力が入ってしまいます。
テレビの視聴には適切な距離があります。一般的に、テレビ画面の高さの約3倍が目安とされています。(※4Kテレビの場合は、高精細なため約1.5倍でも良いとされています)
例えば、高さが約60cmの50インチテレビなら、1.8mほど離れて見るのが理想的です。
また、見上げる・見下ろす姿勢も首や肩への負担になるため、目線が画面の中心か、やや下に来る高さにテレビを設置すると良いでしょう。
3. こまめに休憩をとる
長時間同じ距離を見続けることは、目の筋肉を凝り固まらせる原因になります。
1時間に1回、10〜15分程度の休憩を挟むように心がけましょう。
休憩中は、意識的に遠くの景色を眺めたり、目を閉じて休ませたりするのが効果的です。
蒸しタオルなどで目の周りを温めて血行を良くするのも、眼精疲労の回復に役立ちます。
4. 意識的にまばたきをする
ドライアイを防ぐために、意識してまばたきの回数を増やすことが大切です。
面白い番組に夢中になっている時こそ、「まばたき、まばたき…」と心の中でつぶやいてみましょう。
目が乾くと感じたら、目薬をさすのも良い方法です。
5. テレビの画質設定を見直す
最近のテレビには、画質を細かく設定できる機能がついています。
購入時の設定のままだと、明るすぎたり、色が鮮やかすぎたりすることがあります。
「明るさ」の項目を少し下げたり、映像モードを「シネマ」や「映画」モードに設定したりすると、光の刺激が和らぎます。
また、機種によっては「ブルーライトカットモード」や、部屋の明るさに合わせて画面の輝度を自動調整してくれる機能が搭載されているものもあります。ぜひ設定を見直してみてください。
最新テレビで目の負担を軽減!おすすめの機能とは?
「テレビを見る時間は譲れないけど、やっぱり目の疲れは気になる…」
そんな方には、最新のテレビに買い替えるという選択肢もおすすめです。
近年のテレビは画質が向上しているだけでなく、視聴者の目に配慮した様々な機能が搭載されています。
- 周囲の明るさに合わせて輝度を自動調整する機能
- ブルーライトを低減するモード
- ちらつきを抑えるフリッカーフリー技術
こうした機能を使えば、意識しなくても目に優しい環境でテレビを楽しむことができます。
もしテレビの買い替えを検討しているなら、画質やサイズだけでなく、こういった「目に優しい機能」にも注目してみてはいかがでしょうか。
どんなテレビを選べばいいか分からない…という方は、こちらの記事も参考にしてみてください。専門家が後悔しないテレビの選び方を徹底解説しています。
まとめ:正しい知識で目を守り、テレビライフを楽しもう!
今回は、「暗いところでテレビを見ると目が悪くなるのは嘘」というテーマについて、その理由と本当の目の影響、そして具体的な対策を解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返ってみましょう。
- 「暗いところでテレビを見ると視力が低下する」に医学的根拠はない。
- ただし、視力低下はしなくても、眼精疲労やドライアイ、睡眠の質の低下といった悪影響はある。
- 原因は、明るさの差による瞳孔の疲労や、ブルーライトの影響。
- 目に優しい視聴のコツは、「部屋を明るく」「距離をとる」「こまめな休憩」が三原則!
「目が悪くなる」は迷信だったとしても、目に負担がかかることは事実です。
正しい知識を身につけ、少しだけ視聴環境に気を配ることで、目の健康を守りながら、これからも安心してテレビや映画、ゲームなどのエンターテイメントを楽しんでいきましょう。
今日からさっそく、部屋の電気をつけてテレビを見てみませんか?
【参考資料】