「夏のエアコン電気代を節約したいから、28度設定にしている」
「でも、28度だと正直暑くて快適じゃない…」
そんなお悩みを抱えていませんか?
多くの方が実践しているエアコンの「28度設定」。実は、これには大きな「誤解」が隠されているかもしれません。
この記事では、28度設定の真実と、その誤解を解いた上で、本当に電気代を節約し、かつ快適に過ごすための具体的な5つの新常識を徹底解説します。
この記事を読めば、なぜ28度で暑く感じるのか、そして「自動運転」とどちらが得なのか、賢い選択ができるようになります。
エアコンの28度設定の大きな誤解
まず結論から言うと、政府や環境省が推奨しているのは「エアコンの設定温度を28度にしましょう」ということではありません。
環境省の推奨は室温が28度
環境省が推進する「クールビズ(COOLBIZ)」では、「冷房時の室温28℃」を目安にしています。(参照:環境省 COOLBIZ)
重要なのは、これが「エアコンの設定温度」ではなく、「室温(部屋の温度)」の目安であるという点です。
エアコンの設定温度を28度にしても、部屋の日当たりや建物の断熱性、人の多さによっては、室温が28度以上になっているケースも少なくありません。まずは温度計を部屋に置き、実際の「室温」を把握することが重要です。

「設定温度=室温」ではない、というのが最初のポイントですね。ご自宅に温度計がない方は、ぜひ用意して実際の「室温」を測ってみることをおすすめします。
28度の根拠とは?
では、なぜ「28度」という数字なのでしょうか。
これはクールビズが始まった2005年当時、労働安全衛生法に基づく「事務所衛生基準規則」において、事業者が調整すべき室温の範囲が「17度以上28度以下」と定められていたことなどに基づいています。(現在は18度以上28度以下に改正)
つまり、「なんとなく28度」という目安が独り歩きしてしまった側面があり、厳密な科学的知見に基づいて「最も快適で効率的な温度」として決められたわけではないのです。
28度設定の電気代節約効果は本当?
「28度設定は誤解」と言われると、「じゃあ、節約効果もないの?」と不安になりますよね。
いいえ、エアコンの設定温度を高くすること自体には、明確な節約効果があります。
設定温度1度の差で約13%の節約
経済産業省 資源エネルギー庁のデータによると、無理のない範囲でエアコンの設定温度を調整することは、大きな省エネ効果につながります。
冷房時に設定温度を1℃高くすると、約13%(約70W)の消費電力削減になるとされています。(参照:経済産業省 資源エネルギー庁)
これは非常に大きな効果です。電気代が高いと嘆く前に、まず設定温度を見直す価値は十分にあります。
27度から28度で年間約940円お得に
さらに具体的な数字を見てみましょう。
資源エネルギー庁の別の試算では、外気温度31℃の時、エアコン(2.2kW)の冷房設定温度を27℃から28℃に1℃上げた場合(1日9時間使用)、年間で約940円の節約になるとされています。
「28度設定」にこだわる必要はありませんが、「設定温度をなるべく高く保つ」ことは、電気代節約の王道と言えます。
なぜエアコンの設定が28度では暑いのか
節約効果があるのは分かったけれど、それでも「28度は暑い」と感じる方は多いはずです。その主な理由は「湿度」と「温度ムラ」にあります。
暑さの正体は湿度
人間が感じる体感温度は、気温だけでなく湿度にも大きく左右されます。同じ28度でも、湿度が低ければカラッと感じますが、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、ジメジメとした不快な暑さを感じます。
一般的に、快適と感じる湿度は40%~60%程度とされています。日本の夏は湿度が高いため、室温が28度でも湿度が70%を超えていると、実際の温度以上に暑く感じてしまうのです。
日射や部屋の環境も影響
ほかにも、以下のような要因が体感温度に影響します。
- 日射: 窓から強い直射日光が差し込むと、室温以上に暑く感じる
- 温度ムラ: 冷たい空気は下に溜まるため、天井付近は暑く、床付近は冷えすぎている
- 気流: 風がないと熱が体にこもりやすく、暑く感じる
室温28度でも快適に過ごす5つの新常識
では、どうすれば「節約(設定温度高め)」と「快適さ」を両立できるのでしょうか。室温28度を目安にしつつ、快適に過ごすための5つの具体的な新常識をご紹介します。
1. サーキュレーターで空気を循環
最も効果的な方法が、サーキュレーターや扇風機を併用することです。
冷たい空気は部屋の下に溜まる性質があります。サーキュレーターを使って空気をかき混ぜ、部屋全体の温度ムラをなくすことで、エアコンの効率が格段に上がります。
また、体に直接風が当たることで体感温度が下がるため、設定温度が28度でも涼しく感じやすくなります。
2. 除湿で湿度をコントロール
暑さの原因が湿度にある場合、「除湿(ドライ)運転」を活用するのも有効です。
ただし、機種によっては、除湿のために一度強く冷やした空気を暖め直して送風する「再熱除湿」方式があり、冷房より電気代が高くなることがあります。一方で、室温を下げながら除湿する「弱冷房除湿」方式は、比較的省エネです。

除湿方式の見分け方
お使いのエアコンがどちらの方式か、リモコンで簡単に見分けられる場合があります。
・再熱除湿: 「カラッと除湿」「さらら除湿」など、メーカー独自の名称がついていることが多いです。
・弱冷房除湿: 「除湿」または「ドライ」とだけ書かれている場合が多いです。
詳しくは説明書を確認してみてくださいね。
3. フィルター掃除を徹底
エアコンのフィルターがホコリで目詰まりしていると、空気を吸い込む効率が著しく低下し、余計な電力を消費します。
資源エネルギー庁のデータでは、フィルターを月に1回か2回清掃するだけで、年間で約990円の節約になるとされています。
これは手軽にできる節約術の基本です。2週間に一度はフィルターをチェックする習慣をつけましょう。
4. 日差しを遮り室外機もケア
エアコン本体だけでなく、部屋の環境を整えることも重要です。
- 日差しをカット: すだれや遮光カーテン、緑のカーテンで窓からの直射日光を防ぐ
- 室外機のケア: 室外機の吹き出し口の前に物を置かない
- 室外機の日よけ: 室外機本体に直射日光が当たる場合は「よしず」などで日陰を作り、熱交換の効率を上げる(※吹き出し口は塞がないこと)
5. 窓やドアの断熱性を高める
意外と見落としがちなのが、窓やドアの隙間です。古い建物や気密性の低い部屋では、せっかく冷やした空気が外に逃げ、暖かい外気が侵入してしまいます。
ホームセンターなどで売られている「隙間テープ」を窓のサッシやドアの縁に貼るだけでも、断熱性が向上し、エアコンの効率アップにつながります。
28度設定と自動運転はどっちが得?
最近のエアコンには「自動運転」モードがありますが、「28度設定」とどちらが電気代を節約できるのでしょうか?
結論:最新機種なら自動運転がおすすめ
もしお使いのエアコンがここ数年以内に購入した比較的新しいモデルであれば、迷わず「自動運転」を選ぶことをおすすめします。
28度設定は、単に「室温が28度になるまで冷やし、超えたらまた冷やす」という単純な動作を繰り返すだけです。しかし、自動運転は違います。
最新のエアコンの自動運転は、AIが室温だけでなく湿度や日射し、さらには部屋にいる人の位置や動きまで検知します。それらの情報から「今、最も効率よく快適にできる運転」を自動で判断し、風量や風向を最適にコントロールしてくれます。
結果として、人間が「28度」と手動で設定するよりも無駄な電力消費を抑え、かつ快適な空間を維持してくれる可能性が高いのです。
28度で我慢 vs 27度で快適!どちらを選ぶべき?
「28度では暑いけど、節約のために我慢している…」という方は、27度にした場合の電気代の差が気になりますよね。
前述の通り、27度から28度に設定を上げた場合の節約額は、年間で約940円でした。
これを月額に換算すると、1ヶ月あたり約80円程度の差です。(※1日9時間使用の場合)
月80円の節約のために、暑さを我慢して不快に過ごしたり、集中力が落ちたりするのは、果たして賢い選択と言えるでしょうか。
もちろん、節約は大切ですが、熱中症のリスクを考えると我慢は禁物です。「28度」という数字にこだわりすぎず、自動運転や27度設定を活用し、サーキュレーターなどで快適性を高める方が、トータルで見て賢明な判断と言えるでしょう。
よくある質問(Q&A)
「28度設定」は、エアコンのリモコンで設定する目標温度です。「室温28度」は、部屋の実際の温度です。
環境省が推奨しているのは後者の「室温28度」を目安にすることです。エアコンの設定温度を28度にしても、日差しなどの影響で室温が30度になっていることもあります。室温計で実際の温度を測ることが大切です。
快適な睡眠のためには、28度では暑すぎることがあります。特に熱帯夜は、睡眠中に熱中症になる危険もあります。
節約も大切ですが、睡眠の質を優先しましょう。タイマー機能(例:就寝から3時間後にOFF、または起床1時間前にON)を活用したり、設定温度を26~27度程度に下げたりして、無理のない範囲で調整してください。
人間よりも暑さや寒さを感じやすいため、28度では暑すぎる可能性があります。
特に犬や、自分で体温調節がうまくできない赤ちゃんは注意が必要です。室温計で実際の温度(特に赤ちゃんやペットがいる床付近)を測り、26〜27度程度を目安に、快適な室温を保ってあげることをおすすめします。
冷たい空気は下に溜まるため、温度ムラが原因かもしれません。まずエアコンの風向きを「水平」か「上向き」に設定しましょう。
また、エアコンの風が直接体に当たっていないか確認してください。それでも寒い場合は、サーキュレーターで空気を循環させたり、薄手のカーディガンや靴下などで「首・手首・足首」を冷やさないように調整したりするのがおすすめです。
まとめ:28度の真実を理解し賢く節電
【記事の重要ポイント】
- 環境省の推奨は「設定温度28度」ではなく「室温28度」が目安
- 27度から28度に上げると年間約940円(月約80円)の節約効果が期待できる
- 28度で暑い原因は「湿度」と「温度ムラ」にある
- サーキュレーター併用で体感温度を下げ、快適性を高めるのが最強の節約術
- 最新機種なら「28度設定」より「自動運転」の方が賢く効率的
「28度」という数字に縛られる必要はありません。
大切なのは、室温計で「実際の室温」と「湿度」を把握し、自動運転やサーキュレーターをうまく活用しながら、ご自身が快適でいられる環境を整えることです。
無理な我慢は熱中症のリスクを高めます。正しい知識で賢くエアコンを活用し、今年の夏を快適に乗り切りましょう。
