しかし、諦めるのはまだ早いかもしれません。そのトラブル、実はパソコン内部に溜まった不要な電気が原因である「帯電」の可能性が非常に高いです。
この記事では、誰でも簡単にできる「放電」という対処法を、写真付きの分かりやすい手順で徹底解説します。多くの場合、この放電作業だけでパソコンは嘘のように復活します。修理に出す前の最後の砦として、ぜひこの記事を読みながら試してみてください。
パソコンの電源がつかないという絶望的な状況から、あなたを救うための具体的なステップをご紹介します。
パソコンの電源がつかない…「放電」でなぜ直るの?
まず、なぜ「放電」という作業で電源トラブルが解決するのか、その仕組みから理解していきましょう。原因が分かれば、安心して作業に取り組めますよね。
そもそもパソコンの「放電」とは?
パソコンの「放電」とは、パソコン内部の回路に溜まった不要な電気(残留電流や静電気)を完全に除去する作業のことです。専門的な知識や道具は一切不要で、誰でも安全に行える対処法の一つです。
パソコンは精密な電子機器の塊です。電源をシャットダウンした後も、マザーボードなどの内部パーツには微弱な電気が残っていることがあります。通常、この電気は問題になりませんが、何らかの要因で過剰に溜まってしまうと「帯電」という状態になり、様々な不具合を引き起こす原因となるのです。

イメージとしては、セーターを脱いだ時にパチパチっと静電気が起きるのと同じような現象が、パソコンの内部で起きていると思ってください!
帯電が引き起こす「保護回路」の作動
パソコンの電源ユニットには、過剰な電流や電圧からデリケートな内部パーツを守るための「保護回路」という安全装置が備わっています。
長時間の使用やタコ足配線などによって内部に電気が溜まりすぎると、この保護回路が「異常な電流が流れている!」と勘違いして作動し、パソコンへの電力供給を強制的にシャットアウトしてしまうのです。
これが、電源ボタンを押しても無反応になる主な原因です。
放電を行うことで、この溜まった電気を一度リセットし、保護回路の誤作動を解除して正常な状態に戻すことができます。つまり、故障ではなく、一時的なエラーを解消する作業が放電なのです。
放電が有効な症状とは?
もしあなたのパソコンに以下のような症状が見られる場合、放電によって改善する可能性が非常に高いです。
- 電源ボタンを押しても全く反応しない(ランプもつかない)
- 電源は入るが、メーカーロゴから先に進まない
- 起動してもすぐにフリーズする、またはシャットダウンする
- USBマウスやキーボードなどの周辺機器が認識されない
- バッテリーが正常なのに充電ランプが点灯しない
これらの症状は、物理的な故障ではなく、電気的なトラブルが原因であることが多いのです。
【実践】ノートパソコンの電源がつかない!放電のやり方(電源ボタン長押しがカギ)
それでは、実際にノートパソコンの放電方法を解説します。ノートパソコンはバッテリーのタイプによって手順が少し異なりますので、ご自身のパソコンを確認しながら進めてください。
STEP1:パソコンを完全にシャットダウンする
まずはパソコンの電源を完全に切ります。すでに電源が切れている場合はこのステップは不要です。
もしフリーズしているなどで正常にシャットダウンできない場合は、電源ボタンを10秒以上長押しして、強制的に電源をオフにしてください。
STEP2:接続されているケーブル類をすべて取り外す
次に、パソコンに接続されているものをすべて取り外します。これは、外部からの電力供給を完全に断つために非常に重要な作業です。
- ACアダプター(充電器)
- マウス、キーボード
- USBメモリ、外付けHDD
- HDMIケーブル、LANケーブル
- プリンターなどその他すべての周辺機器

とにかく、パソコン本体が「裸」の状態になるように、つながっているものは全部抜いてくださいね!
STEP3:バッテリーを取り外す(着脱可能なモデルの場合)
お使いのノートパソコンのバッテリーが取り外せるタイプの場合は、本体からバッテリーを取り外します。
多くのモデルでは、本体の裏側にあるロックをスライドさせることで簡単に取り外せます。外し方が分からない場合は、無理に行わず、メーカーの公式サイトや取扱説明書を確認してください。
バッテリーが内蔵されていて取り外せないモデルの場合は、このステップは飛ばしてSTEP4に進んでください。
STEP4:電源ボタンを長押しして放電する
ここが最も重要なポイントです。
ACアダプターやバッテリーが外れた、電力が全く供給されていない状態で、パソコンの電源ボタンを15秒~30秒ほど長押しします。
「え、電源が入らないのに意味あるの?」と思うかもしれませんが、この操作によって内部回路に残っている微弱な電気を強制的に放出し、消費させることができるのです。
バッテリー内蔵モデルの場合は、この電源ボタン長押しが唯一の放電手段となるため、特に念入りに行いましょう。機種によっては、メーカーが推奨する秒数が異なる場合があるので、可能であれば公式サイトも確認してみてください。
STEP5:数分間放置し、元に戻して起動確認
電源ボタンを長押ししたあと、そのままの状態で最低でも2分以上、できれば5~10分ほど放置します。これにより、確実に放電が行われます。
時間が経過したら、以下の手順で元に戻します。
- バッテリーを取り外した場合は、しっかりと奥まで装着し直します。
- ACアダプターのみを接続します。(この時点ではマウスなどはまだ接続しないでください)
- 電源ボタンを押して、パソコンが起動するか確認します。
無事にメーカーロゴが表示され、OSが起動すれば放電は成功です!起動が確認できたら、マウスやキーボードなどの周辺機器を接続して、通常通り使用できるか確認してください。
デスクトップパソコンの放電方法
デスクトップパソコンの場合も、基本的な考え方はノートパソコンと同じです。作業は比較的シンプルですが、手順をしっかり守って行いましょう。
- パソコンをシャットダウンする
正常にシャットダウンできない場合は、電源ボタンを長押しして強制終了します。 - 電源ケーブルを抜く
壁のコンセント側と、パソコン本体側の両方を抜いてください。電源タップに接続している場合は、タップの電源もオフにしましょう。 - すべての周辺機器を取り外す
モニター、キーボード、マウス、USB機器、LANケーブルなど、本体に接続されているケーブルをすべて取り外します。 - 電源ボタンを10秒以上長押しする
ノートパソコンと同様に、何も接続されていない状態で電源ボタンを長押しし、内部の電気を放出させます。 - 数分以上放置する
最低でも5分以上は放置しましょう。デスクトップは内部の部品が多いため、少し長めに時間を取るのがおすすめです。 - 電源ケーブルと最低限の機器を接続して起動
時間が経ったら、電源ケーブル、モニター、キーボード、マウスのみを接続して電源を入れ、起動するか確認します。

作業前に、ドアノブなどの金属に触れて自分自身の静電気を逃がしておくと、より安全に作業できますよ!
【症状別】「電源つかない」のにランプはつく?これも放電で直る?
「電源ボタンを押しても画面は真っ暗だけど、電源ランプや充電ランプはついている…」というケースもよくあります。この場合も、放電で改善する可能性は十分にあります。
ランプはつくが起動しない原因
電源ランプが点灯するということは、パソコン本体に電気が供給されている証拠です。しかし、そこからOSを起動させるための次のステップにうまく進めていない状態と言えます。
この原因として考えられるのが、やはり帯電によるメモリやBIOS(バイオス)の一時的な動作不良です。
- BIOSの誤作動: パソコンの基本的な制御を行うプログラム(BIOS)が、帯電によって正常に動作せず、起動命令を出せない状態。
- メモリの認識不良: 帯電が原因で、メモリが一時的に認識されなくなり、起動プロセスが停止している状態。
放電は、これらのパーツを電気的にリフレッシュさせる効果があるため、ランプはつくが起動しないという症状にも有効な対処法なのです。上記で解説した手順通りに放電を試してみてください。
パソコンの放電は一晩放置する必要ある?最適な時間は?
「放電って、一晩くらい放置しないとダメなの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。結論から言うと、一晩放置する必要は全くありません。
放電に必要な時間は数分で十分
一般的に、パソコン内部の残留電流が完全に放出されるのに、それほど長い時間はかかりません。
ケーブル類をすべて取り外し、電源ボタンを長押ししたあと、多くのメーカーが推奨している放置時間は「2分~10分程度」です。
もちろん、念のために30分や1時間ほど置いても問題はありませんが、一晩中放置したからといって放電の効果が劇的に高まるわけではありません。むしろ、長時間バッテリーを外したままにすることは、パソコン内部の時計を管理しているCMOS電池の消耗を早める可能性もあるため、推奨されません。
まずは10分程度を目安に試してみて、それでも改善しない場合は他の原因を探る方が効率的です。

放電作業は、ケーブルの抜き差しなども含めて、トータル15分もあれば完了します。手軽に試せるのが良い点ですね!
久しぶりに使ったら電源がつかない!これも放電で直る?
クローゼットの奥から久しぶりにノートパソコンを引っ張り出してきたら、電源がつかなかった…というケース。これも非常によくあるトラブルです。
主な原因は「過放電」と「帯電」
長期間使用していなかったパソコンの電源がつかない場合、主な原因は2つ考えられます。
- バッテリーの完全放電(過放電)
バッテリー残量がゼロのまま長期間放置されると、「過放電」という状態になり、バッテリー自体が劣化・故障して充電できなくなってしまうことがあります。 - 湿気などによる帯電
保管場所の環境、特に湿気などの影響で、使っていなくても内部の回路が帯電してしまうことがあります。
まずは、ACアダプターを接続して、最低でも1時間以上充電してみてください。充電ランプが点灯するかどうかが一つの目安です。
それでも電源が入らない場合は、過放電ではなく帯電が原因の可能性があります。これまで説明してきた放電の手順を試してみる価値は十分にあります。
特に、バッテリーを取り外せるモデルの場合は、一度バッテリーを外し、ACアダプターだけで起動を試してみると、バッテリーの故障なのか本体の問題なのかを切り分けることができます。
【最終手段】パソコンを放電しても電源がつかない原因と対処法
「手順通りに放電したのに、全く状況が変わらない…」そんな時は、帯電以外の原因が考えられます。ここでは、放電しても電源がつかない場合に考えられる原因と、その対処法について解説します。
原因1:電源ケーブル・ACアダプターの故障
意外と見落としがちなのが、パソコン本体ではなく、電力を供給する側に問題があるケースです。
- 接触不良: 電源ケーブルのプラグがコンセントや本体にしっかり刺さっていない。
- ケーブルの内部断線: 見た目では分からなくても、ケーブル内部で線が切れている。
- ACアダプターの故障: アダプター本体が故障し、電力を正常に変換できていない。
【対処法】
- 壁の別のコンセントに挿してみる。
- 電源タップを使っている場合は、壁のコンセントに直接挿してみる。
- ACアダプターにランプがある場合は、点灯しているか確認する。
- 可能であれば、同じ型のACアダプターを持っている友人に借りるなどして、交換して試してみる。
原因2:ノートパソコンのバッテリー劣化・故障
ノートパソコンの場合、バッテリーが完全に劣化・故障していると、それが原因で起動を妨げていることがあります。
【対処法】
バッテリーが取り外せるモデルであれば、バッテリーを外した状態で、ACアダプターのみを接続して起動を試みてみましょう。これで起動するなら、原因はバッテリーの故障でほぼ確定です。新しいバッテリーに交換することで解決します。
バッテリー内蔵モデルの場合は、この切り分けが難しいため、修理サポートへの相談が必要になります。
原因3:メモリの接触不良
パソコン内部にある「メモリ」というパーツの接触が悪くなっていると、電源は入っても画面が真っ暗なまま、という症状が出ることがあります。
【対処法】
パソコンの分解にある程度知識がある方向けの対処法ですが、裏蓋を開けてメモリを一度抜き、再度しっかりと挿し直す(挿し直し)ことで改善することがあります。ただし、分解はメーカー保証の対象外となるリスクや、他のパーツを破損させる危険性があるため、自信のない方は絶対にやめましょう。
原因4:マザーボードや電源ユニットなど内部パーツの物理的な故障
ここまで紹介した方法をすべて試しても改善しない場合、残念ながらパソコン内部の基盤(マザーボード)や電源ユニットといった、心臓部のパーツが物理的に故障している可能性が高いです。
- 焦げたような異臭がする
- ハードディスクから「カチカチ」といった異音がする
このような症状が見られる場合は、重度の故障が考えられます。無理に電源を入れようとすると状態を悪化させる危険があるため、すぐに使用を中止してください。
【対処法】
この段階になると、個人での対処は不可能です。購入したメーカーのサポートセンターや、専門のパソコン修理業者に相談しましょう。保証期間内であれば、無償で修理してもらえる可能性もあります。
よくある質問(Q&A)
ここでは、パソコンの放電に関してよく寄せられる質問にお答えします。
いいえ、消えません。放電はあくまでハードウェアに残った電気を取り除く作業です。ハードディスクやSSDに保存されているファイルや、Windowsの設定などが消えることは一切ありませんので、ご安心ください。ただし、ごく稀に日付や時刻の設定がリセットされる場合がありますが、インターネットに接続すれば自動的に修正されます。
定期的に行う必要はありません。放電は、あくまで電源が入らないなどのトラブルが発生した際の対処法です。パソコンが正常に動作している場合は、予防的に放電を行う必要はありません。
はい、効果があります。バッテリー内蔵モデルの場合、「バッテリーを外す」という手順は行えませんが、それ以外の「周辺機器をすべて外す」「ACアダプターを抜く」「電源ボタンを長押しする」という手順で、内部の電気をリセットすることが可能です。特に、電源ボタンの長押しが重要な役割を果たします。
まとめ:パソコンの電源がつかない時は、まず放電を試そう!
この記事では、パソコンの電源がつかないという絶体絶命のピンチを救う「放電」について、その仕組みから具体的な手順、そして放電しても直らない場合の対処法まで、網羅的に解説しました。
最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- パソコンの電源トラブルの多くは、故障ではなく内部の「帯電」が原因。
- 「放電」は、溜まった電気をリセットして正常な状態に戻すための有効な手段。
- 放電の基本手順は「①シャットダウン → ②全ケーブルを抜く → ③(可能なら)バッテリーを外す → ④電源ボタン長押し → ⑤数分放置」。
- 放電しても直らない場合は、ACアダプターの故障や内部パーツの故障の可能性も視野に入れる。
パソコンの電源が突然入らなくなると、本当に焦ってしまいますよね。しかし、そんな時こそ落ち着いて、まずはこの記事で紹介した「放電」を試してみてください。
多くの場合、修理に出す必要もなく、あなたの手で簡単にパソコンを復活させることができます。
もし、どうしても解決しない場合は、無理せずメーカーや専門業者に相談することが大切です。この記事が、あなたのパソコンライフの一助となれば幸いです。